トラクターを運転する篠原さん
「柔道日本代表の監督を退任したのが40歳を過ぎていた頃。今まで柔道しかしてこなかったので、漠然と何か新しいことをやりたいと思っていました。
家にいる時間が長くなり、ごろごろしている時に、ウチの嫁が邪魔だと思ったのか、『あんた性格が悪いんやから、暇なら土いじりでもしたら?』と言うので、当時住んでいた奈良の自宅の小さな庭で家庭菜園を始めました。水をやり、実ができ、収穫して食べる、そんな体験をしていくうちに『これは素晴らしい』と実感できたんです。
今まで嫁さんに任せきりで育児や子育ても大してしてこなかったので、『育てて食す』ということに興味を持ちだしました。ちょうど、その頃はテレビの仕事で日本全国に行かせてもらうなかで、“自然というのは美しいな”と感じていました。現役時代は暇があればネオンの方に足が向いていたんですけど(笑)、歳を経て自然のよさを実感するようになっていきました」
移住先の物件探しに数年かかり、たどり着いたのが、信州・長野だった。2018年に安曇野市にある古民家風の戸建てを購入。2020年には住民票も移した。なぜ、奈良から500キロ以上も離れた長野だったのだろうか。
「40歳も過ぎた頃でしたし、どこか地方に住みたいなと。北海道も候補として考えましたが、天候が悪ければ飛行機も飛ばなくなるし、いざ何かあった時に東京などの大都市に戻るのが難しい。『移住は自分には敷居が高いな』と思った時に、長野という土地が浮かんできました。そこで嫁さんに『長野に住みたいんだけど?』と聞いたら、『長野ならいいよ』と賛成してくれたので、すぐに決断しました。ちょうど知り合いが安曇野の物件を紹介してくれ、実際に内見に行ったら嫁さんも気にいったので住むことになりました」