ホリエモンも服用する「SGLT2阻害薬」とは?

糖尿病治療薬についてはダイエットのためだけでなく、「予防」を目的として服用する人もいる。ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏は糖尿病予防を目的として体重をコントロールするため「SGLT2阻害薬」を自費診療で服用していることをインタビューで明かしている。

しかし、これも判断は慎重にしなくてはいけない。

「有効な可能性があると話題になっていますが、立証はされていません。現在のところは糖尿病専門医などの判断のもとで、肥満度が高く、持病がある人が主な対象となっており、副作用の観点からも注意が必要です」(谷本さん)

完治が難しい糖尿病が寛解しやすい人の特徴

一度発症すると完全に治療することは難しく、薬と一生涯つきあわなければいけないとされてきた糖尿病だが、昨年発表された研究結果に注目が集まっている。

新潟大学や全国の糖尿病専門医でつくる研究会によると、1989年から2022年にかけて全国の糖尿病専門施設に通院していた18才以上の2型糖尿病患者約4万8000人の診療データを分析したところ「5.3年(中央値)追跡した結果、3677人が寛解していた」とした。これは1年あたりでみると約1%が寛解する計算だという。同研究会は寛解しやすい人の特徴として、「女性より男性、診断から1年未満、血糖値がそれほど高くない、肥満である」などを挙げた。

未来のメディカルダイエットは「つらくない」時代に

医学的なアプローチで、やせやすい体を作り脂肪を減らすという“夢のような”ダイエットはGLP-1に限らず、すでに私たちの生活に浸透し始めている。

漢方やサプリメント、点滴、脂肪溶解注射、医療機器として認可されたマシンを使用した脂肪冷却などその種類はさまざまで、美容クリニックを中心に、ダイエット外来や医療ダイエット専門クリニックを掲げるところもあるなど“市場”は活況。二の腕、お腹まわりなど気になるところを集中的にケアすることもできるし、高い効果も期待できる。なによりつらい食事制限や運動によるストレスがないという大きなメリットが売りだ。

木原さんは「メディカルダイエットは今後、“適正体重をコントロールする”ために定着していくと思います」と指摘する。

「太らないということはあらゆる病気の予防になるばかりか、ひざが痛い、腰が痛いといった日常生活のちょっとした不調も解消してくれる。やせたいと思うのは美容目的だけではないでしょう。人生100年時代といわれる現代で、健康長寿のために医療の力で体重をコントロールすることは大切な要素になると思います」(木原さん・以下同)

一方で注意したいのは、やはり副作用。

「体にやさしいと思われがちな漢方も体質によっては合わないこともある。マシンを使った痩身は、腫れや痛みが生じることもあります。いずれも違和感を覚えたらすぐに医師に相談してほしい。医療や科学の進歩でそうした副作用も改善され、オーバードーズ(過剰摂取)を防ぐような制度も完備していくことが望ましいですね」

アメリカで議論。肥満症治療薬の副作用「オゼンピック顔」

海外を見るとアメリカでは日本に先んじて「ウゴービ」が肥満症治療薬として承認されており、同じGLP-1の一種である「オゼンピック」も認可されている。日本同様、ダイエット目的で使用する人はかなりいるという。アメリカ・ボストン在住の内科医、大西睦子さんが言う。

「肥満が大きな問題になっているアメリカでは、抗肥満薬は大きく注目されています。ダイエットのための購入は適応外使用として月に約1000ドルかかりますが、テレビでオゼンピックのCMが流れるほど一般認知度は高い」

CMでは服用者の多くが体重を減らしていることにも触れられていて、その情報は充分すぎるほど効果があったという。

「日本と同じように副作用の注意喚起はあり、脂肪だけでなく筋肉量も減らすことや、急激な体重減少で皮膚のしわやたるみが生じ“オゼンピック顔”になるといったことが論文で報告され議論されている。アメリカは肥満薬の供給不足が深刻です。日本でも、治療に必要な人が使用できるようダイエット目的の使用には注視が必要です」(大西さん)

取材/小山内麗香、三好洋輝 イラスト/藤井昌子 写

※女性セブン2024年2月29日・3月7日号

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