フジテレビをやめるという考えはなかったという(撮影/藤岡雅樹)
昭和が終わる瞬間は「アマゾンのジャングル」に
阿部さんは報道志望で、バラエティ番組への出演依頼は青天の霹靂だった。しかし、とにかく仕事がしたかった。それも誰もが知る大人気番組だ。そこから約2年半にわたって海外を回ることになる。
「『なるほど!』ではいろんな経験をすることができました。最も思い出深いのは、昭和が終わる時にアマゾンのジャングルにいたことです。ベネズエラの小さな村でセスナをチャーターしてジャングル上空をひたすら1時間飛び、緑の中の小さな空き地に着陸、自分たちの食料とバッテリーを持ってさらに1時間ほど歩いて、そこで暮らすインディオたちの集落で過ごしました。
携帯電話はもちろん、電気もガスも水道も無いですから、川で水浴びをしてハンモックを吊って寝ていました。地面に寝ると虫に刺されるからです。
そして1週間の滞在後、迎えに来たセスナのパイロットから“昭和天皇が崩御した”と聞きました。村に戻って、宿からアナウンス部に電話すると“今日から通常編成に戻ったから大丈夫だよ”って。昭和から平成に変わる瞬間に日本にいられなかったことは、報道を志望していた者としては思うところがありましたが、まったくの別世界で過ごしていたこの経験も貴重だなと」
『なるほど!』の体当たり仕事を終えると、阿部さんはパリ支局に赴任して朝の報道・情報番組『FNN World Uplink』のキャスターとなった。海外赴任もまた忘れられない経験になる。