日本の朝に元気を与えてきたNHK連続テレビ小説『ブギウギ』がいよいよ最終回を迎える。共演者たちの主人公・スズ子(趣里)への想いは格別だろう。フィナーレを目前に控え、「楽劇団の辛島部長」を演じた安井順平がスズ子に愛の言葉を贈った。
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辛島部長はスズ子や羽鳥といった個性の強い人たちの間で板挟みになる“ザ・中間管理職”という役どころ。僕は常々、芝居の根幹は「受け」にあると思っていて大事にしたいと心がけていますが、スズ子が「受け」に回る芝居が実に素晴らしかったんです。
初めて共演しましたが、趣里さんがすごいと思ったのは移籍騒動の際に辛島部長がスズ子の下宿に乗り込んでいくシーン。看板歌手の移籍を防ぐために辛島部長はスズ子を問い詰め、移籍契約書を破いて食べてしまう。スズ子はポカンとしたりオロオロしたり表情やリアクションをコロコロ変えて、僕もそれに合わせて怒りを増していく。その波長が劇的に一致した結果、真剣に怒っているのにどこかコミカルに映るシーンになりました。僕がヒステリックに大騒ぎして趣里さんが受ける立場でしたが、すごく芝居がやりやすかったんです。
趣里さんの「受け」には様々なバリエーションがあって、相手の役者のタイプやタッチによって瞬時に切り替えることができるのでしょう。僕と絡む場面と(母・ツヤ役の)水川あさみさんとの場面でも受け方が変わる。受ける芝居に長けているのは舞台などで多くの経験を積んだからだけではなく、持って生まれたセンスも大きいと思います。
芝居の波長が合うと僕は勝手に思っているので、趣里さんも同じ思いだったら嬉しいですね(笑)。
【プロフィール】
安井順平(やすい・じゅんぺい)/1974年生まれ、東京都出身。1995年よりお笑い芸人、2007年より俳優として活動。劇団イキウメ所属。主な出演作に映画『生きててごめんなさい』、ドラマ『エルピス』、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』など。
※週刊ポスト2024年4月5日号