全国各地や世界各国をめぐった麻田さんと青柳さんの約5年間にわたる二人三脚の日々も、終わりが近づいていた。1977年になると、麻田さんへのモデルの仕事依頼が増え、青柳さんの事務所では対応できなくなっていた。青柳さんがモデルクラブを紹介すると、大きなCMの仕事も舞い込んだ。青柳さんも広告撮影の仕事が忙しくなり、麻田さんと話し合って次でヌード撮影を最後にすることを決めた。
同年4月18日、最後の撮影が始まった。麻田さんは最初はビキニを着用し、次にビキニを脱いで男物のシャツを身につけた。これまでと同じように、麻田さんは青柳さんの無言の指示を感じ取り、あうんの呼吸で右に左に動いてポーズをとった。
その後、青柳さんが「シャツを脱いで」と促すと、ヌードの撮影へと展開。カメラを替えながら49本ものフィルムを撮り終え、青柳さんが「これが最後のカットになる。サヨナラ奈美」と声をかけると、一筋の涙が頬を流れたという。
「実はその瞬間のことはあまり覚えていないのですが、『これで最後なのか』とこみ上げてくるものがあったのだと思います」(麻田さん)
青柳さんは無言でシャッターを立て続けに押した。涙の写真が麻田奈美のファイナルカットとなった。
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