爆発物の一部は数十メートル離れたコンテナ上部の壁を貫通(赤い矢印で示したところ。時事通信フォト)

爆発物の一部は数十メートル離れたコンテナ上部の壁を貫通(赤い矢印で示したところ。時事通信フォト)

聴衆の頭上を越えて飛んだ爆弾

 ここで警護体制再構築のきっかけとなった岸田首相テロを振り返る。事件は2023年4月15日午前11時25分ごろに発生。和歌山市の雑賀崎漁港で、衆院和歌山1区補欠選挙の応援遊説に訪れた岸田首相の演説直前、首相らに約10メートル先から手製の「パイプ爆弾」と呼ばれる筒状の爆発物が投げ付けられ、50秒後に爆発した。

 首相は無傷だったが、近くにいた聴衆と警察官の2人が軽傷。その場で聴衆らに取り押さえられ、威力業務妨害容疑で現行犯逮捕された木村被告はパイプ爆弾1本と、手持ち花火にも多く使われる黒色火薬4グラム、刃渡り13センチの包丁1本を所持していた。

 重傷者や死者が出なかったのが不思議に思えるほど、パイプ爆弾が現場に残した痕跡は激しかった。

 爆弾2本のうち爆発した1本の筒の一部は吹き飛んで聴衆の頭上を通り越し、40メートル離れた倉庫近くにある生け簀の網の上に落下。上方の倉庫の壁には直径5センチのへこみがあったほか、さらにその先の20メートル離れた位置にあるコンテナの、高さ2メートルの位置に破片が突き刺さっており、大きさ数センチの穴が開いていた。

 爆発せずに残っていた1本には、紐でナットが複数取り付けられ、爆発の衝撃により飛散して威力・殺傷能力を高める仕組みになっていた。

 現行犯逮捕後、兵庫県内にある木村被告の自宅からは黒色火薬530グラムが押収されており、2022年11月ごろから昨年4月15日までの間、爆弾に詰められていた粉末などと合わせて560グラムの火薬をネット上の情報に基づいて無許可で加工し、精巧な爆弾本体を造り上げていた。

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