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紅麹事件によって問題視される『機能性表示食品』 2015年スタートの新しい制度、「健康政策ではなく経済政策」の指摘も

(写真/PIXTA)

紅麹騒動でさまざまな問題が明らかに(写真/PIXTA)

「老化による視力低下を食い止めたい」、「血圧やコレステロール値を下げたい」、「シミやしわを薄くしたい」──健康や美容を願って手にしていたはずのその一錠、一剤が実はあなたの体に害を与えていたことが紅麹騒動で明らかになった。“気軽に手に入れられる健康と美容”の代償について考えたい。【前後編の後編。前編から読む

機能していない「セーフティーネット」

 紅麹問題では、製造環境の管理体制不備や工場の老朽化も、健康被害の拡大をもたらした可能性が指摘されている。厚生労働省と大阪市は3月30日、食品衛生法に基づき小林製薬の大阪工場に立ち入り検査を実施し、衛生管理などの実態を調査。製造工程では少なくとも2件のトラブルがあったことがわかっている。最初に判明したのは原料の前段階の材料を培養するタンクを温める温水が、タンク内部に混入した事案。さらに、昨年4月には床にこぼれた材料を使って食品向けの紅麹原料を製造していたことが明らかになった。 だがこれも、氷山の一角に過ぎない。東京大学非常勤講師の左巻健男さんが解説する。

「医薬品は、安全に安定した品質で製造できるよう、原材料の受け入れから製造、出荷までの工程について、GMP(適正製造規範)に沿うことが求められていますが、食品であるサプリメントはこれが義務づけられていません」(左巻さん・以下同)

 実際、問題となった「紅麹コレステヘルプ」を製造していた小林製薬の大阪工場は、GMPの認定を受けていなかった。

「厚労省からの通達で、錠剤やカプセルなど成分を濃縮するものについては取得が推奨されていますが、形骸化していると言っていいでしょう。以前、サプリメントを製造する200社についてGMPの認定を受けているかどうか調べたところ、6割は認定外でした。  認定を受けていないということはすなわち、製造管理や安全管理に第三者の目が入っていないということ。中小企業では自社で作らずに外注するところもあり、製造元の企業ですら、どんな環境で原料が作られているのかを把握していないケースすらありえます」

 サプリメントが食品である以上、食品衛生法に基づいた管理はなされているが、それだけでは成分量のばらつきや汚染、有害物質の混入を防ぐことは徹底されない可能性は拭えない。製造工場が国内であってもこうした状況なのだから、海外製品に至ってはさらに不透明だ。薬剤師で、和光鍼灸治療院・漢方薬局代表の平地治美さんが語る。

「アメリカや中国など海外から個人輸入したサプリメントをのんでいる人は一定数います。しかし過去にはダイエットサプリメントをのんでいたところ、そこには覚せい剤が混入していたため死亡してしまったという報告や、スキンケアのサプリメントと言いながら、薬品であるステロイド成分が大量に配合されていたこともある。成分以外のものが混じっていたなんていうことは枚挙に暇がありません」

 実際、アメリカでは2018年にカリフォルニア州公衆衛生局の研究チームが「有害な成分の含有が否定できないサプリメント」(米食品医薬品局が2007〜2016年に登録した776製品)について調査を実施したところ、減量を目的とした317種類のうち、84.9%にアメリカでは2010年に販売が禁止された「シブトラミン」、23.7%には発がん性の疑いが指摘され1999年に米食品医薬品局が販売を禁止した「フェノールフタレイン」など、有害な成分を確認した。

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