乙武洋匡候補は小池百合子都知事の全面的支援を受けて選挙戦に臨んだが力及ばず(撮影:小川裕夫)

乙武洋匡候補は小池百合子都知事の全面的支援を受けて選挙戦に臨んだが力及ばず(撮影:小川裕夫)

 突撃が選挙という民主主義を脅かす行為なら、公職選挙法を改正して強権的にギャラリーの行動を制限することも民主主義を脅かすことにつながるからだ。

 実際、乙武候補以外にも突撃された候補者は多いが、その候補者たちも根本候補の“突撃”を迷惑と感じつつも「公職選挙法を改正しよう」という公約を掲げていない。そもそも街頭演説をしていると、たまたま通りがかった人が大きな声を出して候補者を罵倒することは珍しくない。

 公職選挙法の改正は、そうした通りがかりの人を罰することができるようになる危険性を含んでいる。スピーカーを使った大音量と地声の罵倒は異なるが、公職選挙法の改正がそれらを厳格に区別してくれる保証はない。

 東京15区補選に立候補した秋元司候補は、乙武候補と同時刻に約100メートル離れた場所で街頭演説をしていたが、厳重な警戒体制のために満足に演説をできなかった。そのため、自身のXに「権力を使った選挙妨害」と乙武陣営に批判なポストをしている。小池都知事を応援弁士に呼ぶ行為も、立場が変わることで選挙“妨害”に受け取られるのだ。

 東京15区の補選で改めてクローズアップされた選挙“妨害”は古くて新しい問題で、これまでにも繰り返し議論されてきた。そんな選挙“妨害”が改めて話題を集めることになったのは、SNSや動画共有サイトという選挙を可視化するツールが普及したことに起因している。

 民主主義の根幹でもある選挙を突撃からどうやって守るのか。永田町では次期衆院選の話題も熱を帯びてきたが、その問いに対する最適解すら探せていない。

 結局のところ、有権者側から「選挙演説をキチンと聞きたいから、“突撃”をできなくするように公職選挙法を改正しよう」という声が自発的に出るのを待つしかない。しかし、低投票率あったことから考えても、そうした声が出ることは望みが薄いと言わざるを得ない。

補選最終日、乙武陣営の街頭演説直前には警察犬も投入されて厳重な警戒体制が敷かれた(撮影:小川裕夫)

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