選挙戦最終日、豊洲駅前では日本維新の会と日本保守党の小競り合いが発生していた(撮影:小川裕夫)

選挙戦最終日、豊洲駅前では日本維新の会と日本保守党の小競り合いが発生していた(撮影:小川裕夫)

 日本維新の会は最終日に共同代表の吉村洋文大阪府知事を応援弁士として投入。しかし、その演説中に日本保守党の選挙カーが現れ、代表を務める百田尚樹さんが大音量でスピーチを始めた。先に演説をしていた日本維新の会のスタッフは、こうした日本保守党の行為に対して抗議。日本維新の会側から見れば日本保守党の行為は選挙演説を妨害していると映るだろう。

 逆に日本保守党の立場から見れば、「いつまでも演説をしていないで、早く場所を譲ってほしい。ダラダラと演説するのは、日本保守党に演説をさせないための妨害だ」という思いを抱くだろう。こうした両党の思惑がぶつかり合って現場では小競り合いが起きた。選挙で、そうした陣営間の小競り合いは珍しくない。

 日本維新の会と日本保守党の小競り合いが起きる1時間前には、同じ場所で乙武洋匡候補が街頭演説をし、小池百合子東京都知事が応援弁士としてマイクを握っている。

 今回の補選で多発した“突撃”とは無関係に、そもそも東京都知事には身辺を警護するSPが張り付く。しかし、今回は“突撃”に備えて大量の警察官とSPが投入され、周囲の道路も封鎖された。また、警察犬まで投入して道路脇の植栽などに爆発物などの危険物が仕込まれていないかをチェックしていた。

 言うまでもなく2022年の参院選で安倍晋三元首相が街頭演説中に凶弾に倒れた後、街頭演説の警戒は厳重になっている。しかし、同年の参院選最終日に銀座で小池都知事がファーストの会から擁立した候補者の応援演説に立っているが、このときでさえ、そこまで厳重な警戒はされなかった。今回の東京15区は、明らかに異様な選挙戦になっていた。

 ちなみに、大阪府知事も東京都知事と同様に警護対象になる要職だが、警察が吉村府知事を警護することはなく、同じ日に豊洲で実施された街頭演説では日本維新の会が独自に警護スタッフを立たせて身辺の警戒にあたっていた。

公職選挙法改正を候補者が訴えることへの違和感

 異常事態ともいえる選挙戦になったことで、乙武候補は「公職選挙法を改正して、こうした妨害行為をできないようにしよう」という新しい公約を追加。それを街頭演説でも訴えている。

 思うように選挙活動ができなかった乙武候補の忸怩たる心情は理解するが、だからといって、これは政治家(もしくは政治家を目指す立候補者)側が口にしていい公約ではない。

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