がんリスクを上げる・下げる「食生活」
「腸内に食べ物が入ってくると、本来なら腸内細菌がそれらをえさに短鎖脂肪酸をつくることで代謝され、脂肪の燃焼やエネルギーの産生が行われます。ところが人工甘味料は腸内細菌のえさにならないため、代謝が落ちて腸内環境が乱れる。腸内には免疫細胞の7〜8割が存在しており、腸内環境が乱れることで免疫力が落ち、がんリスクが上がると考えられる」
人工甘味料に限らず、甘いものががんリスクを上げるということは専門家の間では定説となっている。
「最大の理由は肥満を招くこと。甘いものを食べて血糖値が上昇すると膵臓からインスリンが分泌され、その状態が続くと体内で慢性炎症が起き、これががんを進行させる。糖質や甘いものを過剰摂取しがちな肥満の人は、体内で炎症が起き続けていることが多いのです。さらに体が重く動くのがおっくうになると、代謝と免疫力が落ちる。肥満の人は、がんになりやすい要素を複数持っているのです」(佐藤さん)
近年危険視されているのはドーナツやケーキ、クッキーといった「超加工食品」だ。工業的につくられた、精製された小麦などのほか糖分、塩分、脂肪のほか食品添加物を多く含む、常温で日持ちのする食品群をいう。特に原材料表示に着色料や保存料、膨張剤、ショートニングなど添加物が多いものは避けたい。秋津医院院長の秋津壽男さんが言う。
「がんは体内の炎症や傷を修復する過程での“エラー”から生じます。そのため、がん予防には体に傷や炎症をつくらないことが重要。糖分や食品添加物のほか、強い塩分や酸味、香辛料、アルコール、極端な熱さなど刺激の強い食品もリスクになる。実際、熱い茶粥を食べる習慣のある奈良県の一部の地域では食道がんになる人が多いというデータも報告されています」
また、エネルギー源となる炭水化物の選び方によっても、がんリスクは左右される。昨年、イギリス人を対象に行われた研究では、精製された小麦粉を使った白いパンを高頻度で食べている人は大腸がんリスクが上昇すると結論づけられた。
「精製された炭水化物には食物繊維が少なく、肥満や動脈硬化につながるほか、体内の炎症を引き起こしてがんの発症を招く可能性があります」(室井さん)
(後編へ続く)
※女性セブン2024年5月23日号
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