芸能

多くのヤクザ映画を手掛けた脚本家・高田宏治氏(90)インタビュー 「閉塞した邦画界を救うのは『令和版・極道の妻たち』しかない」

複数作の構想があると明かす高田宏治氏

複数作の構想があると明かす高田宏治氏

『まむしの兄弟』から『北陸代理戦争』、『鬼龍院花子の生涯』、そして『極道の妻たち』まで、数多の傑作ヤクザ映画で脚本家を務めた高田宏治氏(90)。4月には東映チャンネル(衛星放送)で生誕90周年記念の『名脚本家 高田宏治特集』が組まれた。ヤクザ映画の生ける伝説が、令和の邦画界に喝を入れる。

 * * *
 昭和が終わり、平成を経て、令和の時代になって、ヤクザ映画はもう古いと思っている人も多いやろうけど、動画配信の世界ではいまでもけっこうな人気なんや。その原因ははっきりしている。映画を観てスカッとした気分で日常の暮らしに戻る、そんなドラマはヤクザなどのアウトロー映画しかないからだ。『オッペンハイマー』を観てガッカリした人たちがヤクザ映画を観て、深夜にひそかに留飲を下げるんや。

 ヤクザ映画がドラマとして受けるのは、ヤクザが自分たちだけの法と正義を持っているからだ。一般社会で、もし自分の愛する家族や友人が殺されたら、私たち一般市民は法律で裁いてもらうしかない。けれど、法も裁判官も人の心で裁かない。殺人が一人なら死刑にならへん。殺人も数で値段が決まるのか。犯罪はスーパーの魚の切り身と違うで。そんなときヤクザは命を賭けて自分たちの法で裁く。だから大衆は無法者、アウトローのヤクザに憧れてきたんです。

 反社といわれるヤクザは、貧困や差別、若いころに犯した過ちなどで社会からつま弾きにされ、社会の底辺で辛酸を舐め、波乱に満ちた人生を送ってきた。そやから、取材で実際に会うと、じつに魅力的な人が多かった。

『北陸代理戦争』(1977年、主演・松方弘樹)は、実在する川内組の川内弘組長をモデルにした。この人はとびきりの洒落者で、マキシのコートの胸元にエメラルドのブローチをきらめかせ、ベンツを十台連ねて、加賀温泉駅に私を迎えに来た。川内さんは隠すことなく色んな話を聞かせてくれた。なかでも、抗争相手に決死の覚悟で殴り込みに行き、たまたま相手がいなかった時に、心の底からホッとした、と言う川内さんの一言が心に染みた。死を日常とするヤクザの素顔を見た気がした。

 けれど、映画が封切られたあと、川内さんは私が取材した喫茶店のソファで、私が脚本に書いたシチュエーション通りに抗争相手のヤクザに射殺されたんや。私が川内さんを格好良く描き過ぎたせいや。いまでもこのことを思い出すと、震えが止まらない。

関連記事

トピックス

渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《元フジテレビアナ・渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
 6月3日に亡くなった「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
【追悼・長嶋茂雄さん】交際40日で婚約の“超スピード婚”も「ミスターらしい」 多くの国民が支持した「日本人が憧れる家族像」としての長嶋家 
女性セブン
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
金田氏と長嶋氏
《追悼・長嶋茂雄さん》400勝投手・カネやんが明かしていた秘話「一緒に雀卓を囲んだが、あいつはルールを知らなかったんじゃないか…」「初対決は4連続三振じゃなくて5連続三振」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン
ソロとして音楽活動5周年を迎える香取慎吾
《ソロで音楽活動5周年》香取慎吾が語った「5人とは違って…」「もっとできるはずなのに」ソロで経験した“挫折” ライブツアーでは「パーフェクトビジネスアイドル」としてファンを沸かせる
NEWSポストセブン
13年ぶりの写真集『ふたたび』(双葉社)を5月30日に発売
小向美奈子 Xで「今年結婚します!」投稿の真意を本人に聞いた 今でも「年に1~2回くらいは求婚される」と語る彼女は“ダーリン”との未来予想図をどう描くのか
NEWSポストセブン
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
NEWSポストセブン
沖縄を訪問される天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年6月4日、撮影/田中麻以)
《愛子さま 初めての沖縄ご訪問》ブルーのセットアップで母娘の“おそろい”コーデ再び! 雅子さまはくすみカラーで落ち着いた着こなしに
NEWSポストセブン
人気インフルエンサーがレイプドラッグの被害者に(Instagramより)
《海外の人気インフルエンサーが被害を告発》ワインに“デートレイプドラッグ”が混入…「何度も嘔吐し、意識を失った」「SIMカードが抜き取られていた」【オーストリア】
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
NEWSポストセブン