スポーツ

【プロ野球審判はつらいよ】「ビデオ検証」で判定を覆された審判の“その後”とは? 検証映像を見ながら反省会を行うこともある

クロスプレーの判定にビデオ検証は役立つが…(写真は4月5日の日本ハム-西武戦。時事通信フォト)

クロスプレーの判定にビデオ検証は役立つが…(写真は4月5日の日本ハム-西武戦。時事通信フォト)

 プロ野球をはじめ様々な競技で導入が進む「ビデオ判定」。現在、プロ野球では監督による「リクエスト制度」が導入されている。ビデオ判定の際の場面が球場の大型スクリーンに映し出される時、判定に疑義を持たれた審判はどんな気持ちでいるのか。38年に及ぶプロ野球審判人生で3001試合に出場した橘高淳氏に、スポーツを長年取材する鵜飼克郎氏が聞いた。(全5回の第2回。文中敬称略)

 * * *
 2010年に「本塁打判定」限定で導入されたビデオ判定の範囲は年々広がっている。

 2014年からは本塁打以外のフェンス際の飛球、2016年から本塁クロスプレーにも導入され、2018年以降はストライク・ボールやハーフスイングの判定などを除くほぼすべてのプレーについて、審判の判定に異議がある場合、監督はビデオ検証要求(リクエスト)ができるようになった。

 接戦でのセーフ・アウト判定は勝敗を左右する。選手にしてみれば打率や打点、防御率などの記録にも影響し、それが年俸査定に響くこともある。「ビデオ検証に基づく正確な判定」は総じて監督・選手たちに納得感を与え、歓迎されている。

 実際、リクエスト制度が導入されたことで、誤審によって試合が左右されるケースは大幅に減った。映像確認に委ねることで、監督や選手が審判に執拗に抗議をする場面もなくなった。試合時間の短縮に繫っていることも間違いない。

 だが見方を変えれば、審判の「権威」は揺らぎ、その存在すら否定されかねない変更でもある。極端にいえば審判は“仮判定”をする役割で、「最終判定」を下すのは機械ということになるからだ。しかもプロ野球の場合はビデオ判定がひとつの“ショー”になっている面もある。判定が出るまでの間は球場の大型スクリーンに検証映像が何度も流され、ファンが歓声を上げ、あるいは大きな溜め息を漏らす。

2023年のオールスター第1戦で大型スクリーンに映されたリプレー映像を見る選手たち(時事通信フォト)

2023年のオールスター第1戦で大型スクリーンに映されたリプレー映像を見る選手たち(時事通信フォト)

 明らかな“誤審”であれば、その数分間、判定を下した審判は針の筵だ。審判の立場からはどう感じるのだろうか。2022年、38年間のプロ野球審判生活に幕を下ろした橘高淳が言う。

「マイナス面はないと思っています。あとは我々の心持ちの問題です。いい意味で安心感と自信を持ってジャッジできるようになればいいが、“どうせビデオがあるから”と甘える審判が出てきたら残念なことです。あとは判定が覆った場合に、検証映像を反省材料にできるかどうかですね」

 リプレー検証映像は試合翌日の朝、全審判に連絡網で送られてくる。各自が確認し、事案によっては映像を見ながら、“審判がなぜあの位置に立っていたのか”といった反省会も行なわれるという。リクエスト制度は審判の技術向上にも一役買っているのだ。

関連記事

トピックス

全米野球記者協会ニューヨーク支部主催のアワードディナーに出席した大谷翔平と、妻・真美子さん(左/時事通信フォト、右/提供:soya0801_mlb)
《真美子さんが座る椅子の背もたれに腕を回し…》大谷翔平が信頼して妻を託す“日系通訳”の素性 “VIPルーム観戦にも同席”“距離が近い”
NEWSポストセブン
司法省がアンドリュー元王子の写真を公開した(写真/Getty Images)
《白シャツ女性に覆いかぶさるように…》エプスタイン・ファイルで新公開されたアンドリュー元王子とみられる人物の“近すぎる距離感の写真” 女性の体を触るカットも
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
【2・8総選挙「大阪1〜10区」の最新情勢】維新離党の前職が出た2区、維新前職vs自民元職vs野党候補の5区で「公明党票」はどう動くか
NEWSポストセブン
なぜ実の姉を自宅で監禁できたのか──
《“お前の足を切って渡すから足を出せ”50代姉を監禁・暴行》「インターホンを押しても出ない」「高級外車が2台」市川陽崇・奈美容疑者夫妻 “恐怖の二世帯住宅”への近隣証言
NEWSポストセブン
東京拘置所(時事通信フォト)
〈今年も一年、生きのびることができました〉前橋スナック銃乱射・小日向将人死刑囚が見せていた最後の姿「顔が腫れぼったく、精神も肉体もボロボロ」《死刑確定後16年で獄中死》
NEWSポストセブン
間違いだらけの議事録は「AIのせい」(写真提供/イメージマート)
《何でもAIに頼る人たち》会社員女性が告白「ケンカの後、彼から送られてきた”彼女の方が悪い”とAIが回答したスクショ」ほどなく破局
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
国際ジャーナリスト・落合信彦氏が予見していた「アメリカが世界の警察官をやめる」「プーチン大統領暴走」の時代 世界の“悪夢”をここまで見通していた
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト、2025年10月15日)
《頬がこけているようにも見える》高市早苗首相、働きぶりに心配の声「“休むのは甘え”のような感覚が拭えないのでは」【「働いて働いて」のルーツは元警察官の母親】 
NEWSポストセブン
ジェンダーレスモデルの井手上漠(23)
井手上漠(23)が港区・六本木のラウンジ店に出勤して「役作り」の現在…事務所が明かしたプロ意識と切り開く新境地
NEWSポストセブン
元日に結婚を発表した女優の長澤まさみ(時事通信フォト)
長澤まさみ「カナダ同伴」を決断させた「大親友女優」の存在…『SHOGUN』監督夫との新婚生活は“最高の環境”
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
【訃報】国際ジャーナリスト・落合信彦氏が死去、84歳 独自の視点で国際政治・諜報の世界を活写 
NEWSポストセブン
薬物で急死した中国人インフルエンサー紅紅(左)と交際相手の林子晨容疑者(右)(インスタグラムより)
「口に靴下を詰め、カーテンで手を縛り付けて…」「意識不明の姿をハイ状態で撮影」中国人美女インフルエンサー(26)が薬物で急死、交際相手の男の“謎めいた行動”
NEWSポストセブン