出典/財務省「貿易統計」

出典/財務省「貿易統計」

「遺伝子組み換え」飼料を使うのが一般的

 輸入飼料には衛生面のリスクだけでなく「遺伝子組み換え」の問題もあると、東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授の鈴木宣弘さんが指摘する。

「日本の畜産用飼料は、実に約8割が輸入。特にトウモロコシはほぼ100%がアメリカやブラジル産で、いずれの国でも遺伝子組み換えの品種が一般的です」

 遺伝子組み換え食品のリスクについては、専門家の間でも論争が続いている。だが、食べ続けることで生じる健康被害のリスクは、さまざまな研究結果に裏づけられているのだ。

「2012年にフランス・カーン大学の研究チームがアメリカのバイオ化学メーカーによる遺伝子組み換えトウモロコシ『NK603』を200匹のマウスに与える実験をしたところ、非常に高い確率での発がん性が示唆されました。

 特にメスは発がん率が高く、14か月目で10〜30%に、24か月目ではなんと50〜80%のマウスにがんが発生したのです。オスでも肝臓や皮膚に腫瘍ができたり、消化管に異常をきたしたりする個体が多かったことが報告されました」(鈴木さん)

 少なくともマウス実験のレベルでは、遺伝子組み換えトウモロコシは高い発がん性を持つことが示されたのだ。消費者問題研究所代表の垣田達哉さんが言う。

「実際に人体への健康被害が確認された例はいまのところありませんが、遺伝子組み換え飼料で育った牛肉を人間が食べた場合の健康被害を示唆する論文は複数発表されています」

 現在、国内で流通している遺伝子組み換え飼料はすべてに有害物質がないことを農林水産省が確認して“お墨つき”を出している。だがその一方で、複数の生活協同組合などは「健康被害を起こす可能性が否定できない」として、記載の義務はないにもかかわらず、遺伝子組み換え飼料の不使用を明示した商品を販売している。

 遺伝子組み換え飼料の安全性について微生物の遺伝子組み換え研究の経験を持つ久保さんはこう分析する。

「遺伝子組み換えは、自然界では絶対に起こり得ないこと。研究者の意図とは反対に有害物質やデメリットが現れることも少なくありません。数か月の実験で問題がなくとも、20年間食べ続けた人が健康でいられるかどうか、誰も保証できないのです」

 人体への害が直ちに確認できなかったとしても、複数の研究によってその可能性が示唆されている以上、農作物の遺伝子組み換えには慎重になるべきだ。

 それでも依然として遺伝子組み換えトウモロコシが大量に輸入されてくる背景には、日本をお得意さまとするアメリカの経営戦略があるという。

「トウモロコシや大豆の遺伝子を組み換えるのは、除草剤への耐性をつけて生産効率を上げるためです。

 その除草剤の有効成分には、発がん性や神経毒性、生殖への影響が世代を超えて受け継がれる危険性が国際的に疑われている。にもかかわらず、2017年には日本での当該成分のトウモロコシへの残留基準値は一気に5倍にも緩和されました」(鈴木さん)

 人が食べては危ないものでも、家畜のえさであれば大丈夫──そんな考えのもとに、日本人が信頼を寄せる“国産牛”は、海外で除草剤をまかれた畑で育った遺伝子組み換えトウモロコシをたっぷり食べて育っているものが紛れているのだ。

後編を読む)

※女性セブン2024年7月11・18日号

関連記事

トピックス

実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン