国内

《マイナ保険証強行導入の現実》「設備投資に数百万かかる」廃業危機に瀕する開業医の嘆き 「医療機関1万件廃業」試算に現実味も

「マイナ保険証読み取り機」の導入が大きな負担となるケースも(写真/共同通信社)

「マイナ保険証読み取り機」の導入が大きな負担となるケースも(写真/共同通信社)

 政府が進める紙の保険証の廃止と、「マイナ保険証」の導入。今年12月にはマイナ保険証への一本化を強行する構えを示すなか、影響を受けるのは市民だけではない。町の小さな医院や歯科クリニックがシステム変更による負担増を強いられ、続々廃業に追い込まれているのだ。暮らしを支える「かかりつけ医」の現場で、何が起きているのか。【前後編の後編。前編から読む

 なぜ、マイナ保険証の導入が、地域の医療体制を不安にするほど医療機関の経営を圧迫するのか。

 政府は昨年4月から医療機関にマイナ保険証の対応を義務化した(完全義務化は今年9月)。それに合わせて診療所や歯科医院に1台、病院には最大3台の「読み取り装置」を無償配布したり、購入する際に補助金を出した。

 小規模な医院にかかっても受付にマイナ保険証の読み取り装置が置かれているのはこのためだ。

 政府はマイナ保険証導入の医療機関側の実質負担はゼロと説明している。

 だが、現実は違う。マイナ保険証とセットで導入された医療費の「オンライン請求」義務化が医療機関に重い負担となっている。これは、医療機関が診療報酬を請求する際、医療費を計算したレセプト(診療報酬明細書)をオンラインで申請しなければならないというものだ。

工事費に300万円

 岐阜市で70年以上続く歯科医院の院長B氏(70代)も、廃業を考えている1人だ。こう語った。

「マイナ保険証をオンラインで資格確認するためには診療報酬明細書の作成専用のレセプト・コンピュータ(レセコン)まで全部オンラインでつながなければあかんのです。うちは今もレセプトは紙に手書きして診療報酬を請求しているから、レセコンもネット環境もない。新たに導入するには数百万円の費用がかかるが、あと何年やれるかわからないのに、そんな設備投資はできません。紙の保険証が廃止される12月が辞め時かなと思っています」

 負担増はすでにレセコンを導入してカルテやレセプトの電子化を済ませている医療機関にも及ぶ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン