2004年、元北朝鮮工作員の疑いがある韓国籍で元貸金業80代男性の自宅から押収された北朝鮮、韓国、自分の写真を張った日本の偽造旅券(時事通信フォト)

2004年、元北朝鮮工作員の疑いがある韓国籍で元貸金業80代男性の自宅から押収された北朝鮮、韓国、自分の写真を張った日本の偽造旅券(時事通信フォト)

国籍売買は10年ほど前の倍

 裏ルートはといえば、使うのはもっぱら訳ありの人達だ。その中で最近、問い合わせが増えてきたというのがカンボジアだ。カンボジアの弁護士事務所で、リーガルアドバイザーとして働く日本人S氏によると、コロナ禍が明け、海外への出入国がスムーズにできるようになり始めた頃から問い合わせが多くなってきたという。「カンボジアでは袖の下を払えばどんなことでもできる。当然国籍も売買されているが、以前よりだいぶ値上がりしている」とS氏はいう。その値段は「5000万円。10年ほど前に比べると倍になった感覚だ」。カンボジアという国の印象からすれば2000万円程度を予想したがかなり高額だ。

 問い合わせてくる日本人はといえば「金はあるが、日本にいられなくなったような人たち」と話す。話の端々や入ってくる情報や噂などから、何で金を儲けたのか推測できるらしい。「ビットコインなどで儲けたのはいいがトラブルを起こし、東南アジア圏に逃げそのまま居ついたような人たち、特殊詐欺などで一財産作ったが、いつ誰に悪事が暴露されるかわからないので、安心して過ごせる場所が欲しいという20~40代の輩。仮想通貨を使ったマルチや詐欺で儲けた金で自由気ままに暮らしいんだろう」(S氏)

 他にカンボジアには、貴族の称号が買えないかという問い合わせもあるとS氏は話す。カンボジアには王政があり、王室が付与する貴族階級”オクニャ”がある。政府に寄付をすると与えられるが「その額も跳ね上がった」とS氏はいう。「10年ほど前は10万ドル~20万ドル寄付すればよかったが、今は最低50万ドルが必要だ」。カンボジアの経済界に入り込むため、訳あり日本人が金で貴族の称号獲得を目論んでいるという。

 金を持つ輩でもさすがに5000万円は高いと感じるのか、「問い合わせはあるが、まだ依頼はない」という。

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