国際情報

さながらゼレンスキー大統領のように世界に支援を訴え続けた蒋介石夫人・宋美齢

米国ルーズベルト大統領夫妻の間に立つ宋美齢(中央)。夫の蒋介石を中国に残し、流暢な英語を駆使して全米で講演を繰り返した(写真/時事通信フォト)

米国ルーズベルト大統領夫妻の間に立つ宋美齢(中央)。夫の蒋介石を中国に残し、全米で講演を繰り返した(写真/時事通信フォト)

 日中戦争が勃発してまもない1937(昭和12)年9月、中華民国トップ・蒋介石の妻で流暢な英語を駆使する宋美齢夫人が、南京から米国向けラジオを通じて自国の危機を訴えた。現代で言えば、さながらウクライナのゼレンスキー大統領がロシアの非道を世界に訴えたように日本軍の横暴を批判したのだった。宋美齢は、この対米放送に限らず、多数のメディアやルートを通じて発信し続けていた。その姿は、まさに卓越したアジテーターだった──。

 米国在住のノンフィクション作家・譚?美氏(?は王偏に「路」)の話題の新刊『宋美齢秘録』より抜粋・再構成。

 * * *
 1937(昭和12)年9月11日夜、宋美齢は南京から英語で対米放送を行った。

 NBCの短波ラジオで放送された演説は、欧州を中心に全世界へ向けて発信され、米国内ではCBSの放送ネットワークを通じて全米に中継された。さらに翌日、演説の全文が新聞各紙に掲載され、NBC放送を聞き逃した人々に文字として届けられた。

 この演説について、日本の内閣情報部は「宋美齢の対米放送──調乙23号 昭和12年10月25日」という分析を残している(参考資料/『情報局関係極秘資料』荻野富士夫編、不二出版、2003年9月刊)。

 その分析では、宋美齢が「弱者」中国のファーストレディであり、米国育ちの流暢な英語の使い手だというインパクトの強さとカリスマ性によって、「放送資格百パーセントともいうべき『役者』」と評価されている。また、彼女の演説が破格の扱いを受け、「およそ放送のもたらし得る最大の効果を挙げ得た」「日本に与えた損害は大きく」と分析し、米国ばかりか世界の人々に大きな影響を与えたとみていた。

 海外へ向けた宋美齢のアピールは、この1937年9月の対米放送だけではなかった。蒋宋美齢著『わが愛する中華民国』(長沼弘毅訳、時事通信社、1970年刊)には、ほかにも海外メディアを使った“宣伝戦”の一端が紹介されている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

夜逃げした「郷土料理 たち川」に、食品偽装があったという(左はinstagramより、右は従業員提供)
「飛騨牛はホルスタイン、天然鮎は養殖モノ…」岐阜・池田温泉、町が委託したレストランで“食品偽装疑惑”「仕入れ先が減り、オーナー自らスーパーで割引の商品を…」【7月末に夜逃げしていた】
NEWSポストセブン
痩せる前のエヴィヤタルさん(インスタグラムより)
「弟はもはやガイコツ」「この穴は僕が埋葬される場所だろう」…ハマスが“人質が自分の墓を掘る”動画を公開し世界各国から非難噴出《飲まず食わずで深刻な飢餓状態》
NEWSポストセブン
本州に生息するツキノワグマ。体長120~180センチほど。最近では獣害の被害が増えている(イメージ)
《襲われる被害が多発》クマに悩まされる養蜂家たちが告白 「今年はあきらめるしかない…」「槍を作って山に入るヤツもいる」
NEWSポストセブン
デコラファッションで小学校に登校していたいちかさん、中学生となり衝撃の変貌を遂げていた…!
《デコラ小学生が衝撃の変貌》グリーン&ゴールド髪が“黒髪少女”に大転身「ほぼスッピンのナチュラルメイクで中学に登校する」意外な理由とは
NEWSポストセブン
昨年に第一子が誕生したお笑いコンビ「ティモンディ」の高岸宏行、妻・沢井美優(右・Xより)
《渋谷で目立ちすぎ…!》オレンジ色のサングラスをかけて…ティモンディ・高岸、“家族サービス”でも全身オレンジの幸せオーラ
NEWSポストセブン
“原宿系デコラファッション”に身を包むのは小学6年生の“いちか”さん(12)
《話題のド派手小学生“その後”》衝撃の「デコラ卒アル写真」と、カラフル卒業式を警戒する学校の先生と繰り広げた攻防戦【『家、ついて行ってイイですか?』で注目】
NEWSポストセブン
収監の後は、強制送還される可能性もある水原一平受刑者(写真/AFLO)
《大谷翔平のキャスティングはどうなるのか?》水原一平元通訳のスキャンダルが現地でドラマ化に向けて前進 制作陣の顔ぶれから伝わる“本気度” 
女性セブン
「池田温泉」は旅館事業者の“夜逃げ”をどう捉えるのか(左は池田温泉HPより、右は夜逃げするオーナー・A氏)
「支払われないまま夜逃げされた」突如閉鎖した岐阜・池田温泉旅館、仕入れ先の生産者が嘆きの声…従業員が告発する実情「机上に請求書の山が…」
NEWSポストセブン
バラエティ、モデル、女優と活躍の幅を広げる森香澄(写真/AFLO)
《東京駅23時のほろ酔いキャミ姿で肩を…》森香澄、“若手イケメン俳優”を前につい漏らした現在の恋愛事情
NEWSポストセブン
柳沢きみお氏の闘病経験は『大市民 がん闘病記』にも色濃く反映されている
【独占告白】人気漫画家・柳沢きみお氏が語る“がん闘病” 今なお連載3本を抱え月産160ページを描く76歳が明かした「人生で一番楽しい時間」
週刊ポスト
芸能界の“三刀流”豊田ルナ
芸能界の“三刀流”豊田ルナ グラビア撮影後に語った思い「私の人生は母に助けられている」
NEWSポストセブン
ラーメン二郎・全45店舗を3周達成した新チトセさん
「友達はもう一緒に並んでくれない…」ラーメン二郎の日本全国45店舗を“3周”した新チトセ氏、批判殺到した“食事は20分以内”張り紙に持論
NEWSポストセブン