国際情報

【秘史発掘】日中開戦直後の「宋美齢の対米放送」を日本の情報機関は重大視していた

映画にもなった「宋家の三姉妹」のうち「権力を愛した」と評された三女・美齢(写真/時事通信フォト)

映画にもなった「宋家の三姉妹」のうち「権力を愛した」と評された三女・美齢(写真/時事通信フォト)

 終戦から80年近い歳月を経てもなお繰り返される問いがある。「なぜ日本は圧倒的な戦力差のある米国を相手に戦争に踏み切ったのか」──。その答えは一つではなく、様々な要因が絡み合っているが、転機となった1人の女性の演説があらためて注目されている。宋美齢(そうびれい)──中華民国総統・蒋介石夫人にして、宋家の三姉妹の三女であった彼女が、日中開戦直後に行なった対米放送がそれである。当時、日本はこのファーストレディをどう見ていたのか? 
 
 米国在住ノンフィクション作家の譚璐美氏(璐は王偏に「路」)が日中秘史を紐解く。同氏の近刊『宋美齢秘録』より抜粋・再構成。

* * *
 1941(昭和16)年、日本は米英を相手とする太平洋戦争に突入する。なぜ、日本は経済力・軍事力で遥かに勝る米国に対して、無謀な戦争を挑んだのか──。
 
 実は、それに先立つ1937(昭和12)年の盧溝橋事件の段階では、米国は決して日本との戦争を望んではいなかった。

 当時、米国政府は日本が米国最大の貿易相手国であったことから、日本との摩擦はできるだけ回避したいと考えていた。米国国民も、遠く太平洋で隔てられたアジアの国々で起きている戦争には、あまり関心を持っていなかった。

 それがなぜ、急転直下、中国に対して同情し支援する気になったのか。なぜ、米国政府は日本との良好な貿易関係を捨てて、対中支援へと政策を転換したのか。

1937(昭和12)年7月の盧溝橋事件を機に日中戦争が勃発。その2か月後、日本の非道を訴える宋美齢の対米演説が放送された(写真は現在の盧溝橋/時事通信フォト)

1937(昭和12)年7月の盧溝橋事件を機に日中戦争が勃発。その2か月後、日本の非道を訴える宋美齢の対米演説が放送された(写真は現在の北京・盧溝橋/時事通信フォト)

 その重要なカギを握るのが、宋美齢が米国へ向けて放った「歴史的なメッセージ」であった。

 現代で言えば、ちょうどウクライナのゼレンスキー大統領が世界各国に訴えたように、宋美齢は米国へ向けて訴えた。それを聞いた米国の人々は彼女に大いに共感し、中国に同情して支援しようという機運が米国社会で高まり、米国政府も自国民の期待に応えるべく、対中支援に乗り出したのである。

 宋美齢の発した「歴史的メッセージ」とは、果たしてどのようなものだったのか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「池田温泉旅館 たち川」の部屋風呂に「温泉偽装疑惑」。左はHPより(現在は削除済み)、右は従業員提供
「水道水にカップ5杯の重曹を入れてグルグル…」岐阜県・池田温泉「高級旅館」の部屋風呂に“温泉偽装”疑惑 ヌルヌルと評判のお湯の真実は…“夜逃げ”オーナーは直撃に「誰からのリークなの? それ」
NEWSポストセブン
本格的に中国進出をめざすならば…(時事通信フォト)
《年内結婚報道》橋本環奈と中川大志の「結婚生活」に立ちはだかる“1万kmの距離” 2人の異なる“海外進出の希望先”
週刊ポスト
これまでジャズ歌手などとしても活動してきた参政党・さや氏(写真/共同通信社)
参政党・さや氏、歌手時代のトラブル証言 ジャズバーのママが「カチンときて縁を切っちゃいました」、さや氏は「そうした事実はない」…真っ向食い違う言い分
週刊ポスト
もうすぐ双子のママになる。Numero.jpより。
Photos:Mika Ninagawa
中川翔子3年にわたる不妊治療と2度の流産を経験 。 双子の男の子のママになる妊婦姿を披露して話題に
NEWSポストセブン
錦織圭とユニクロの関係はどうなるか(写真/共同通信社)
「ご本人からの誠意ある謝罪があった」“ユニクロ不倫”錦織圭、ファーストリテイリング広報担当が明かしたスポンサー契約継続の理由
週刊ポスト
趣里と父親である水谷豊
《女優・趣里の現在》パートナー・三山凌輝のトラブルで「活動セーブ」も…突破口となる“初の父娘共演”映画は来年公開へ
NEWSポストセブン
岐阜の「池田温泉旅館 たち川」が突然の閉鎖、事業者が夜逃げした(左は旅館のInstagramより)
【スクープ】岐阜県の名所・池田温泉の人気旅館が突然の閉鎖 町が運営委託した事業者が“夜逃げ”していた! 町長からは228万円の督促状、従業員が告発する「オーナーの計画」 給料も未払いに
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏は2017年にダブル不倫が報じられた(時事通信フォト)
参院選落選・山尾志桜里氏が明かした“国民民主党への本音”と“国政復帰への強い意欲”「組織としての統治不全は相当深刻だが…」「1人で判断せず、決断していきたい」
NEWSポストセブン
オンカジ問題に揺れるフジ(時事通信)。右は鈴木善貴容疑者のSNSより
止まらない「オンカジドミノ退社」フジテレビ社内で話題を呼ぶ
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン