銭湯という商売をする権利を守りたい(写真/イメージマート)

銭湯という商売をする権利を守りたい(写真/イメージマート)

 本来、公共施設や商業施設で設置目的と合致しない行為、しかもわいせつな行為に及べば、公然わいせつ罪や偽計業務妨害などの犯罪に該当する可能性が高い。だが実際には、逮捕や起訴に至る前例が少なく、被害者のほうが辛抱強く訴え続けねばならないなど様々な負担が大きいこともあって、事件化に至らないことが多い。何より最近は、自由恋愛で関係性を持つことの何が悪いのかと、論点をずらして強弁する当事者たちもいる。「そして、強い態度で出られると施設側も被害者も臆してしまいがちだ。

私の商売をする権利を実際に脅かしているのは誰か

 ネット上の掲示板には、出会いを求める書き込みが今も相次いでいる。その範囲は全国各地を網羅していて、筆者の自宅近くにある海に面した公園のベンチ、図書館脇のトイレ、さらに学校や保育園にも近い場所にある公園のトイレなど特定の詳細住所が待ち合わせ場所として、インターネットに接続できれば誰でも閲覧可能な状態で記入されていた。もちろん、その掲示板に書き込んで交流する人たちの目的が、単なる待ち合わせであれば問題視はされない。だが、前述のような問題が全国で相次いでいる以上、筆者としても相当の気味悪さを感じる。ポルノまがいのことが子供の目に触れるのはやはり気がかりだし、大人であっても時間も場所も好みも無視されて見せつけられたいものではないだろう。

 掲示板に何を書き込もうと言論の自由だし、同好の士との出会いを求めること自体は問題ではない。だがそれが、ところ構わず自分たちの流儀を周囲に押しつけるような、傲慢なやり方でよいはずはない。性的少数者への理解を深めることが現代の常識、とする識者の中には、迷惑行為、犯罪行為に及んだとしても寛大な気持ちを持つべきという意見を表明している人がいるのには、正直なところ驚いた。彼らの権利を認めることと、迷惑行為、ときには犯罪にも問えるようなことを許容するのは全く別の問題である。

 彼らに対して何も言わないから、もしくは注意しないから気づけないだけではないかというと、そういう訳では無いらしい。実際に、そうした現場の治安を守ろうと注意した人たちからは「文句を言ってもやめない、怒ると人権侵害と跳ね返され、こちらはそれ以上何も言えなくなってしまう」という声が上がる。その結果、残念ながら簡単な声かけで注意喚起をしておさまった時期は過ぎようとしている。だから、問題が大きくなってからしか被害を公に訴えられなかったと、前出の銭湯経営者Aさんが言う。

「昨日も今日も、そういう客が来た。あなたたちの権利を認めないわけじゃないが、その前に私の商売をする権利を実際に脅かしているのは誰か、と強く問いたいね。内部から非難の声が出ることを期待するね」(銭湯経営者Bさん)

 銭湯経営者が言うように、彼らと同じ性的志向を持つ人すべてが、迷惑をかけるようなやり方で出会いを求める人ではないことも事実である。ネット掲示板で堂々と具体的な情報交換をしているうちに、自分たちが適切とはいえない場所で適切ではない方法でもかまわず連絡を取り、施設の目的と相反する不適切行為に及んでいる、という事実と向き合えなくなっているのかもしれない。彼らのコミュニティーによる自浄能力に頼む気持ちが社会に残っているうちに、少しでも状況が改善されることを期待したい。

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