国内

【北陸新幹線の敦賀~新大阪延伸計画】建設費が想定の2倍の3.9兆円に膨らみ費用対効果激減 整備委員会議員は「そんな数字は意味ないから」

巨費を注ぎ込む工事が続いている(北海道新幹線のトンネル工事の様子/写真=共同通信社)

巨費を注ぎ込む工事が続いている(北海道新幹線のトンネル工事の様子/写真=共同通信社)

 国民に負担増を強いる一方、そうして国が得た税収は、費用対効果の低い“カネ食い虫”の公共事業に流れていた──資材や人件費の高騰が問題になるなか、巨額予算の動く公共事業はその影響を大きく受ける。国交省が予算をつけている全国400以上の道路・新幹線を調べると、事業費が増大し、費用対効果が激減しているものが数多くあると判明した。ノンフィクション作家・広野真嗣氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む

 * * *
 大型公共事業が曲がり角に差し掛かっている。

 1987年に決定された高速道路1万4000キロの計画はほぼ完成し、手付かずなのはわずか700キロ。田中角栄をして「地域開発のチャンピオン」と称した新幹線は、1988年に比べ1.5倍の距離まで伸びた。

 見逃せないのは、国土交通省の公表資料を分析していくと、いずれの事業も投下資金が膨らむばかりになっている事実である。

 直近の道路事業の6割で「費用対効果(B/C)」は悪化していた。その主因である事業費に着目すると、当初の想定から増えた建設費の総額は1.5兆円にものぼり、当初の予算から3倍に膨張した事業もある。

「B(ベネフィット=便益)/C(コスト)」は、投下した建設費などに対して移動時間を短縮したり、経費を節減したりする効果がどれだけ発生するかを数値化した指標だ。「1」を上回れば、コストを上回る効果が得られる目安となり、事業着手の判断の指標になってきた。だが、条件を満たすと判断されて工事が始まっても、後になって「1」を割り込んで続行されている例が相次いでいる。

建設費倍増でも「関係ない」

 新幹線でも事業費が増加し、結果、B/Cが減少する例が頻発している。政府・与党が来年着工を目指す北陸新幹線の敦賀~新大阪の延伸計画について、朝日新聞は7月18日、次のように報じた。

〈政府が進める「小浜・京都ルート」の建設費が、従来想定の2倍の3.9兆円に膨らむ見通しであることがわかった〉〈今の計算方法による費用対効果は1.1から0.5程度に下がる見込み〉

 小浜・京都ルートなら最大の地元負担を強いられる京都府からは、事業を不安視する声があがり、8年前に消えた滋賀県を通る米原ルートを有力視する見解も浮上。地元と国を巻き込んだ政治的駆け引きが勃発している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン