中学時代に競技を始め、16歳でアジア大会出場、五輪はメルボリン、ローマ、東京大会に出場したレジェンド・馬淵かの子氏(筆者撮影)

中学時代に競技を始め、16歳でアジア大会出場、五輪はメルボリン、ローマ、東京大会に出場したレジェンド・馬淵かの子氏(筆者撮影)

難点は選手と審判員の“点数ギャップ”

 あらゆる採点競技で技の進化が著しい。馬淵が選手として出場した1964年東京五輪の際には、体操の日本代表選手が当時の最高難度(C)を超える技を繰り出し、「ウルトラC」と命名された。それから60年が過ぎた今ではG、H、I難度まで登場している。

 当然、飛込競技でも審判員が技の進化に追いついていかなければならないが、採点の難しさはどのような点にあるのだろうか。

「技の難易率は決まっていますし、事前にどういう技で飛び込むのかも提出されます。組み合わせとしては新しくても、回転や踏み切り、空中姿勢、ひねりといった個々の要素は同じ。それぞれの姿勢の美しさを判定することに変わりはないので、採点そのものは競技経験者であれば難しくはありません。

 難しさがあるとすれば、選手と審判員の“点数ギャップ”かもしれません。私も選手時代に“なぜこの程度の点数なのか”という思いをたくさんしました。国際試合では国によって審判が辛くなったり、甘くなったりする。だからこそ公平に判定しないといけない。私が減点を0.5にしたばかりにメダルを逃したとわかると本当に気の毒に思う。だからこそ選手も納得できる採点が必要なのですが、簡単にはギャップは埋まりませんね」

 採点競技では、審判員のつけた点数をめぐって物議を醸すケースは後を絶たない。2022年冬季五輪(北京)ではスノーボード男子ハーフパイプ決勝で平野歩夢の2本目の滑走が低い点数になったことが問題になった。平野は3本目で最高点を記録して金メダルに輝いたが、インタビューで2本目の点数について問われ、「納得はいってなかったけれど、怒りが自分の中で(3本目に)うまく表現できた」と答えた。

 選手としても審判としても日本を代表する立場であった馬淵もこう本音を漏らす。

「現役時代は同じ水泳競技でも、どちらが先にゴールしたかで勝ち負けが決まる競泳の選手を羨ましく思ったものです。“タイムで順位が決まる競技は審判員のえこひいきがないのに……”と恨みました」

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