空席ポストの行方

 なぜ、そんな象徴的な日に登記をしたのか。この点は、先に触れた「ありえた別シナリオ」と関わる。

 遺産分割は、相続税の申告期限となる今年9月までに行なわれると見込まれていた。

 法定相続人は香峯子氏のほか、長男で主任副会長の博正氏(71)、三男の尊弘氏(66)、次男で故人の城久氏の2人の子(池田氏の孫)の計5人だった。

「小さな家」への転居と前後する時期、小学5年生、4年生、幼稚園児だった3人について、池田氏は「三巨頭会談」と題したエッセイを書き残している。

〈長男の背丈は、いつか女房を追い越してしまった。次男は五十二キロの体重で、学級第一、アダ名を大鵬とつけられた。三男の甘ったれは豆タンクさながら、すばしっこい〉

〈(お小遣いについて)長男は最高額をせしめるのが当然と心得、三男は二人の兄と同額だと主張してやまない。不平等を唱え、要求貫徹を叫ぶ姿は、組合や議会もそこのけである〉(月刊『オール讀物』1965年6月号掲載)

 ちなみにカリスマ性では父親譲りとの呼び声が高かった次男・城久氏は1984年に29歳の若さで病気のため亡くなった。三男・尊弘氏は裏方のサポート役と見られてきた。

 残る長男・博正氏には「学者肌」という評価がある一方、「池田氏亡き後に空席となったSGI(創価学会インタナショナル)会長に就くのではないか」という観測も、一部の学会員の間にはある。

 実際、池田氏の死後、6代会長の原田稔氏(82)とともに訃報を伝える動画に登場したほか、岸田文雄首相の弔問にも原田氏とともに立ち会った。

 池田氏自身は世襲を否定していたものの、その血を引くだけに、やはり組織の指導者としての地位を継ぐのではないか、「血脈の力」を押し出すのではないか、という見方は完全には拭えない。

後編に続く

【プロフィール】
広野真嗣(ひろの・しんじ)/ノンフィクション作家。神戸新聞記者、猪瀬直樹事務所スタッフを経て、フリーに。2017年、『消された信仰』(小学館文庫)で小学館ノンフィクション大賞受賞。近著に『奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか』(講談社)。

※週刊ポスト2024年9月20・27日号

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