作品内で恵比寿の地主に扮する老人を演じた五頭岳夫さん(事務所提供)
国内でも有数の大手企業が巨額詐欺被害に遭うまでの一部始終を綴った報告書は、被害から約6カ月後にはまとめられ、取締役会に提出されていたのは前編で述べた通りである。
ところが、報告書はその後も公開されることはなく、事件に関する一連の裁判終結後の2020年12月にリリースされた「総括検証報告書」として、一部を黒塗りにした上で公開された。
「事件後に起きたクーデター騒動が原因です。報告書の作成を主導したのは当時の取締役会長。取締役会では、この報告書をもとに、地面師詐欺被害で莫大な損失を出した社長の経営責任を問おうとした。社長の解任動議を可決させて社長に引導を渡そうとしたが、社長の反撃を喰らって逆に会長職を解任されてしまった。実権を握った社長はその後、会長に就任し、自らの失態が綴られた問題の報告書を黙殺してしまったわけです」(元2課担)
ドラマでも描かれた社長と会長の派閥争い。詐欺事件後は多く描かれていなかったが、実際の事件では、社長が会長を追い出し、会長になっていたのだ。
こうした暗闘の名残が報告書からうかがえるのだ。