●『テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?』(2022)
コンプラ必至の昭和深夜バラエティから“呪い”が伝播
いとうせいこうが司会を務める、最近よくあるアーカイブ紹介系番組。いかにも“昭和”な架空の番組『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』が発掘されるのだが、それを見ていくうちに奇妙なことが起こり始める。
『テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?』(2022)。写真提供/テレビ東京
『ミッドナイトパラダイス』内の視聴者投稿コーナーのVTRには不穏なものが映り、スタジオ出演者たちの言動もおかしくなっていく(写真提供/テレビ東京)
ついには『ミッドナイトパラダイス』を見ていたいとうや井桁弘恵まで意味不明な言動をし始め、もはや収拾不可能な事態に。井桁は何の脈絡もなく大笑いして、いとうの目が据わり始める(写真提供/テレビ東京)
●『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』(2022)
NHK Eテレが送り出す架空の特撮番組
1970年代に放送された「岡本太郎作品モチーフの特撮ヒーロードラマ」が発掘されたという体裁。芸術の巨人・タローマンが「奇獣」と戦う本編の後には、“再放送世代”のサカナクション・山口一郎が思い出をまるで実在した特撮であったかのように語る。
『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』(2022)。写真提供/NHK
タローマンは岡本太郎の思想を反映し、決して「正義のヒーロー」ではなく「デタラメ」。最終回には地球を爆破してしまう(写真提供/NHK)
1970年代の特撮らしさを細部にまでこだわり、当時とほぼ同じ手法で撮影した。視聴者も設定に乗っかり、SNSなどで架空の思い出を発信する現象も起きた(写真提供/豪勢スタジオ)
【プロフィール】
てれびのスキマ(ライター)/1978年生まれ。テレビ番組に関する取材を行なう。戸部田誠の名義での著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イースト・プレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)など。最新刊『フェイクドキュメンタリーの時代──テレビの愉快犯たち』は、日本で最もテレビを視聴していると言っても過言ではない著者が、膨大な資料と番組制作者への直接取材を元に「テレビ・フェイクドキュメンタリー現代史」を解き明かした一冊。
※週刊ポスト2024年11月1日号





