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【新刊】心までケアするネイリストの奥深き世界を描くお仕事小説 三浦しをん『ゆびさきに魔法』など4冊

美から健康、心までケアするネイリストの奥深き世界

美から健康、心までケアするネイリストの奥深き世界

 2025年が始まった。新しい年に新たな本と出会い、読書の幅を広げてみては。おすすめの新刊を紹介する。

『ゆびさきに魔法』/三浦しをん/文藝春秋/1980円
 まず深謝、黒い爪を見て血豆かと思っていた自分を。月島美佐を通じてネイルの“真善美”を描くお仕事小説だ。月島のネイルサロン「月と星」の立地がいい。庶民的な商店街、2階建て長屋の1階がサロンで2階が住居、壁続きの隣は居酒屋と、著者の好物がギュッと詰まる。男性の巻き爪処置、人気俳優への施術など、大沢星絵という陽気な相棒を得てシリーズ化への期待も爆上がり。

正義は信じないが、誠実は信じるに値する。誠実は丁寧であることに尽きる(本文より)

正義は信じないが、誠実は信じるに値する。誠実は丁寧であることに尽きる(本文より)

『またどこかで 大人の流儀12』/伊集院静/講談社/1320円
 2017年から逝去数ヶ月前の2023年の晩夏までに書かれたエッセイからの抜粋。東日本大震災の記憶、犬や猫のいる仙台での穏やかな生活、大人の流儀を知らない若者への叱咤激励などにまじって、母上への記述が多いのが心に染みわたる。「私は母から文字も、書も、詩歌も教わった」。72歳で見つめた作家の原点。まだ伊集院さんの不在が実感できない。それでいいのだとも思う。

日本唯一のヘビ専門研究所の精鋭4人が、ユーモラスに語るヘビの歴史と文化

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『ヘビ学 毒・鱗・脱皮・動きの秘密』/ジャパン・スネークセンター/小学館新書/1155円
 2025年の年賀状の絵柄には皆さまお困りだったのでは? 十二支中最も愛嬌ナシ。本書冒頭のカラー写真にもノケぞる。が、ほとんどのヘビは神経質で臆病なのだとか。蛇行運動、チョロチョロ舌の機能(ニオイセンサー)などヘビの解体新書にしてヘビ毒にまつわるトリビアの書でも。研究所の看板蛇は体長5mの巳波ちゃん(ビルマニシキヘビ)。会いに行ってみませんか?

特殊能力+凹凸コンビ+ニーチェの思想。著者の得意技を詰め込んだ快足エンタメ

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『ペッパーズ・ゴースト』/伊坂幸太郎/朝日文庫/946円
 中2の布藤鞠子から自作の小説を読んでほしいと渡された国語教師の檀先生。お話は鞠子の小説の章と、飛沫感染により飛沫を飛ばした人の未来が観えるというやっかいな能力を持つ檀先生の章の2本レールで進むが、やがて2本のレールは連結し、テロ事件も絡んでくる。と書いてもチンプンカンプンでしょうが、今回もオフビートな面白さ全開。伊坂節の真骨頂をご堪能あれ。

文/温水ゆかり

※女性セブン2025年1月2・9日号

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