【脱獄者】
「とはいえ、今まで挙げてきた不満が距離・便器・虫か。それだけなら8850円を覆すには不十分なんじゃないか? そうはいっても入りたい人の方が多いでしょ」と思ったそこの君。君は何にもわかっていない。三鷹寮は空室だらけだ。

 それは決して審査が厳しいわけではない。

 前述の通り三鷹寮への申請資格は、「通学時間」と「経済的理由」だ。しかし、提出書類として必ず家計の収入状況を見られることになるため、基本的には「経済的理由」が重視される傾向にある。

 僕は非課税世帯なのですんなり通ったが、例えば、僕の知り合いのO君。彼は私立の中高一貫に通っていて家もめちゃくちゃ金持ち。しかし、地方という理由だけでなんやかんや審査が通った。だから、「経済的理由」という条件を無視して「通学時間」の条件だけクリアできれば誰でも入居できるくらい審査がガバガバなのだ。それくらい部屋が余っている。

 さらに、金がある地方勢が入居したとしてもそれは長くは持たない。

 三鷹寮の居住環境に絶望し、一刻も早く脱獄を図るからだ。それもそのはず、こんなところ金があれば長くいる理由がない。ここに住む理由は「家賃が安い」、それだけだからだ。

 実際そこに縛られないO君も入居してすぐ駒場近くの代々木上原(単身用の家賃相場10万円)に引っ越していった。富裕層との格差をまざまざと見せつけられた瞬間だった。家賃が安いという首輪に繋がれた僕は、O君が退去していく姿を指を咥えて見ているしかなかった(チュパチュパ)。

第3回に続く)

富山県トップの公立進学校から東大法学部という経歴を生かし「東大のリアル」を描いた『ヤバイ東大解剖録』(KADOKAWA)

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