ビジネス

《日本で最初の大規模ニュータウン》大阪の「千里ニュータウン」が限界化しない理由 1970年万博をきっかけに開業した鉄道

1970年の大阪万博会場地跡地に残る太陽の塔(撮影:小川裕夫)

1970年の大阪万博会場地跡地に残る太陽の塔(撮影:小川裕夫)

 4月13日から始まる大阪・関西万博の玄関口となる大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)中央線「夢洲駅」(ゆめしまえき)が1月19日に開業した。前回、1970年の大阪万博のときにも、新しく鉄道が敷かれ新駅が開業していた。日本で最初の大規模ニュータウン「千里ニュータウン」と1970年2月24日に江坂-万国博中央口間が開業した北大阪急行電鉄の成り立ちと関係性について、ライターの小川裕夫氏が上梓した「鉄道がつなぐ昭和100年史」(ビジネス社)から抜粋、加筆してお届けする。

 * * *
 第2次世界大戦後、1945年から1954年頃までの日本では戦災復興によって経済が急速に回復を遂げ、その影響から大都市では労働力不足が発生していました。主に町工場や個人商店では人手が足りず、なんとか労働力を確保しようと躍起になっていました。

 一方、地方の農村部では所有する農地を長男へ相続させるのが一般的だったので、次男や三男は家業を継ぐことができず、必然的に新しい仕事を探さなければなりませんでした。

 農業が主要産業である当時の地方都市において、新しい仕事を見つけることは至難の業 です。当時の地方都市では中学校卒業後に高校へと進学する選択肢はほとんどなく、多くの少年・少女は卒業と同時に教員に言われるがまま集団就職列車に乗って都会へと旅立っていきました。

 地方から出てきた少年・少女たちは、めったに手に入らない貴重な人材「金の卵」と呼ばれ1964年には流行語となり、もてはやされますが、実態は体のいい丁稚奉公でした。駅に到着したその日から、金の卵たちは有無を言わさず商店や町工場に住み込みで働かされます。金の卵たちに休む暇は与えられず、就業時間外でも家事や育児を強制させられました。

 そんな金の卵たちも働き始めてから数年が経過すると、結婚して家庭を持つ年頃になります。結婚後も職場に住み込みで働くわけにはいかず、金の卵たちは自分の家を持つようになるのです。

 集団就職列車で東京・大阪にやってきた金の卵たちの数は膨大で、とても住宅は足りません。これが戦災復興から高度経済成長の時期に起きた現象です。

 こうして大都市近郊には、大規模ニュータウンが続々と計画されていきました。日本初のニュータウンと言われる千里ニュータウンは、大阪府が1958年に計画を策定したことから開発が始まります。

関連記事

トピックス

もうすぐ双子のママになる。Numero.jpより。
Photos:Mika Ninagawa
中川翔子3年にわたる不妊治療と2度の流産を経験 。 双子の男の子のママになる妊婦姿を披露して話題に
NEWSポストセブン
錦織圭とユニクロの関係はどうなるか(写真/共同通信社)
「ご本人からの誠意ある謝罪があった」“ユニクロ不倫”錦織圭、ファーストリテイリング広報担当が明かしたスポンサー契約継続の理由
週刊ポスト
趣里と父親である水谷豊
《女優・趣里の現在》パートナー・三山凌輝のトラブルで「活動セーブ」も…突破口となる“初の父娘共演”映画は来年公開へ
NEWSポストセブン
岐阜の「池田温泉旅館 たち川」が突然の閉鎖、事業者が夜逃げした(左は旅館のInstagramより)
【スクープ】岐阜県の名所・池田温泉の人気旅館が突然の閉鎖 町が運営委託した事業者が“夜逃げ”していた! 町長からは228万円の督促状、従業員が告発する「オーナーの計画」 給料も未払いに
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏は2017年にダブル不倫が報じられた(時事通信フォト)
参院選落選・山尾志桜里氏が明かした“国民民主党への本音”と“国政復帰への強い意欲”「組織としての統治不全は相当深刻だが…」「1人で判断せず、決断していきたい」
NEWSポストセブン
オンカジ問題に揺れるフジ(時事通信)。右は鈴木善貴容疑者のSNSより
止まらない「オンカジドミノ退社」フジテレビ社内で話題を呼ぶ
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン
江夏豊氏(右)と工藤公康氏のサウスポー師弟対談(撮影/藤岡雅樹)
《サウスポー師弟対談》江夏豊氏×工藤公康氏「坊やと初めて会ったのはいつやった?」「『坊や』と呼ぶのは江夏さんだけですよ」…現役時代のキャンプでは工藤氏が“起床係”を担当
週刊ポスト
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン