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「寿司職人でアメリカンドリーム」の“大きな落とし穴”凡人はチップをもらって節約しても《半端ない大赤字家計》の現実

気温-10度、過酷な冬の現場仕事(「地獄海外難民」氏のXより)

気温-10度、過酷な冬の現場仕事(「地獄海外難民」氏のXより)

 世界に広がる日本食・寿司。寿司職人が渡米し、数千万円稼いだという話がテレビ番組などで紹介されることもある。寿司をアメリカで握れば、本当に誰でも稼ぐことができるのか。

 アメリカ人女性との結婚を機に米国に移住し、見習い大工として働くYouTuber「地獄海外難民」氏が、そうした日本人の素朴な疑問について著書で赤裸々に回答。知られざるアメリカでの日本人の仕事事情を『底辺の大工、ヤバいアメリカで生きのびる絶望の中で見つけた「自分を見失わない」方法』(KADOKAWA)から紹介する。(同書より一部抜粋して再構成)【全3回の第3回。第1回を読む】

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ニューヨークでは月収50万円でも「赤字」

「アメリカでお金に困ってるなら、寿司職人になればいいのに」

 一時期、そんなコメントをよくいただきました。

 確かにアメリカでは寿司職人の求人も見かけますが、寿司職人の経験がない人は、時給20ドル程度からのスタートです。ニューヨーク州の最低賃金は15ドルなので、20ドルはそれほど高くはないし、家賃も払えません。

 もしかしたら、お客様からのチップも含めれば月に50万円(※1ドル=150円換算、書籍執筆時)くらいいくかもしれません。ただ、必死に節約しまくっている「難民」家でも月に70万円ぐらいはかかっているので、月50万円のお給料では赤字です。

「アメリカって日本より時給が高いんですよね。時給3000円とかもらえたら、楽勝じゃないですか?」

 よくこういったコメントもいただきますが、全然楽勝じゃないです。ニューヨークの平均生活費は家族4人で月117万円です。

 もちろん、ヘッドシェフやマネージャーなどのレベルになれば、年収1000万円、1500万円の求人もあります。でも、僕みたいな凡人が、いきなりそんなレベルの職人やマネージャーになれるかといったら、絶対になれません。

 どうやら、日本のメディアで一時期「日本人だったら寿司職人になれるし、そうなったらすべて解決」みたいなイメージができてしまったようです。

アメリカでの職探しで最重視したいこと

「お金に困ってるなら、アメリカ軍に入隊すればいいのに」も多いです。

 でも、妻の友人がアフガニスタンで戦死しているので、妻からは「軍に入るなら離婚する」と言われています。今は世界中で戦争が起きていますが、やっぱり僕はまだ死にたくありませんし、離婚もしたくありません。

 それに、僕の職場の5分の1くらいは昔、軍にいた人です。

 軍にずっといる人というのは実は少なくて、皆、除隊後の職探しにかなり苦労しているそうです。除隊後に大工になるのであれば、今わざわざ大工をやめて、アメリカ軍に入隊する理由はありません。

 また、軍隊出身者にはPTSDを患ってしまった方々もいます。普段からこういう方たちを見ている僕としては、やはりどうしても軍に入隊する気にはなれません。戦争で大事な人を失った話、人を殺めてしまった話、除隊後もずっと精神的に苦しんでいるという話を聞くと、とても心が痛みます。

 それから、日本語講師は大卒以上でないとなれませんし、時給が上がっていくわけではないので、相当の能力がなければ続けていくのは難しいでしょう。

 トラックドライバーは家族と離れないといけないので論外です。それに、僕は運転があまり得意ではありません。アメリカ人の運転も恐ろしすぎます。

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