名古屋高裁の前でフラワーデモをする人たち(時事通信フォト)

名古屋高裁の前でフラワーデモをする人たち(時事通信フォト)

「そもそも性暴力事件が『故意犯』を前提とするところに問題があります。2つの事件ではともに『同意があると思った』という『誤信』の主張が受け入れられ、被告側の『故意を欠く』と結論づけられた。故意犯であるか否かが重要な分かれ目になる性暴力事件では、この被告側の『わざとではないから犯罪にはならない』という主張がまかり通ってしまったのです」

 そもそも犯罪の規定は、罪を犯す意思を持つ『故意犯』であることを前提としており、刑法38条1項には〈罪を犯す意志がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りではない〉とある。過失致死罪などは、過失ゆえの行為であっても罰されるケースもあるが、法律に規定がない性暴力事件では「故意でない」と認定されれば、原則としては罪に問われないのだ。

 2023年7月の刑法改正で、性暴力事件の構成要件が見直され、「同意のない性行為」は、不同意性交罪として原則、罪に問われることになった。ただ、刑事罰の対象に「過失犯」を加えるかどうかについての議論が進むことはなかった。

 前出の弁護士はこうも指摘する。

「つまり悪意のあるレイプ犯に『同意があると勘違いした』という逃げ口上を作らせる可能性があるわけです。そうした事態を防ぐためにも、刑法の適用範囲を『過失犯』にまで広げるという議論も今後は必要になってくるでしょう」

「性暴力を許さない」

 怒りがこもった、そんな合い言葉を掲げる住民運動が立ち上がったのは、2019年のことだ。性暴力被害者に寄り添う意思を示すため、参加者が花を手に抗議の声を挙げたことから、「フラワーデモ」と呼ばれるようになった。この運動は、全国に広がりを見せ、「同意のない性的行為」が原則、犯罪とされるようになった2023年の刑法改正につながった。

 沖縄で相次いだ2つの「無罪判決」は、性犯罪への司法判断に今後どのような影響を与えるのだろうか。

関連記事

トピックス

実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン