1974年デビュー曲『今夜かしら明日かしら』のプロモーションに臨むテレサ・テン

1974年デビュー曲『今夜かしら明日かしら』のプロモーションに臨むテレサ・テンさん

夜は「小鄧」が支配する

 事後処理に奔走した前出の舟木氏が振り返る。

「国交のない日本と台湾の往来にはその手続きだけで半年近くかかりました。そこで友人がテレサのインドネシアのパスポートを作ってくれて、国交のない日本などにはそれで入国していたこともありました。それがある日、発覚してしまった」

 台湾当局は身柄引き渡しを求めたが、歌手活動ができなくなることを恐れたテレサは米国に滞在する。『テレサ・テンが見た夢』の著者でテレサに何度も取材をした作家の平野久美子氏は、「その間に中華民国政府と交渉したのだろう」と言う。

「国のために尽くすことが台湾帰国の条件でした。テレサのお父さんも、兄弟たちも国民党軍関係者でした。当時は1979年。台湾民主化前ですから、軍の慰問などで『愛国歌手になれ』ということです」(平野氏)

 政府はテレサを利用して中国本土と世界各地の華人の気持ちを惹き付けたかった、と平野氏は見る。

「そのため“歌う公務員”と呼ばれたりしました。彼女の人気は瞬く間に『改革開放』が始まった中国本土にも広まり、『中国の昼は老鄧(鄧小平)が支配し、夜は小鄧(鄧麗君=テレサ)が支配する』と言われるまでになりました」(同前)

 パスポート事件から3年後、ついに日本に戻ったテレサは再デビューを果たし、1980年代にはミリオンヒットを連発する。

「再デビュー2曲目が1984年の『つぐない』です。パスポート事件からの復帰だから、過去に対する償いの意味もあるなんて言われるけど、実際はそんなことは考えていませんでした(笑)。これがとにかく大ヒットして、『愛人』『時の流れに身をまかせ』と続く。テレサの黄金時代です」(舟木氏)

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