永山代表(左)は霊代、花城松一名誉顧問(中央)は推薦人、與那代表補佐は取持人を務めた(撮影/鈴木智彦)

永山代表(左)は霊代、花城松一名誉顧問(中央)は推薦人、與那代表補佐は取持人を務めた(撮影/鈴木智彦)

武器の横流しで抗争激化

 糸数二代目は、初代富永会長と同じ久米島出身で、富永一家の三代目を継いだ子飼いである。

 第四次抗争が終結した後の1982年、27歳で殺人事件を起こし、15年間岐阜刑務所に服役。出所すると第五次抗争が終結したばかりで、沖縄には三代目旭琉会と沖縄旭琉会が存在し、またも一触即発だった。

 石原慎太郎都政の副知事として歌舞伎町浄化作戦を展開した警察官僚の竹花豊は『沖縄県における暴力団の実態と取り締まり』にこう記している。

「沖縄の暴力団の歴史は、鮮血に彩られた対立抗争の歴史である。(中略)それは残虐さと陰湿感だけを残す安物アクション劇を何度も見せられた後の暗い後味を想起させる。黒い私利だけを追い求めて、人の生命や安全を踏みにじってきた彼らの無法ぶりには“三分”の同情やあわれみをも持つ余地がない」

 警察キャリアが激高したのは訳がある。

 第四次抗争最中の1977年、敵対事務所を襲撃に来た組員たちが、警備中の警官にカービン銃を向け「イッターカラサチニ、クルサイヤー」(※お前から先に殺してやる)と叫んで発砲、手榴弾を爆発させ銃撃戦を繰り広げたのだ。

 県警本部長は「もし刃向かうなら射殺せよ」と指示、異例の声明を発表した。にもかかわらず、その後の第五次抗争では2人の警官が誤射され殉職した。

 沖縄の抗争が過激化するのは、米軍基地から殺傷力の高い武器が横流しされ、殺人が連鎖し、長期化するからだ。古参幹部は「これまで喧嘩になった双方で、抗争資金として40億は使ったろう」と述懐する。ようやく一本化されたのは、冒頭で取りあげた2011年の盃の時だった。

 二代目継承と盃直しが終わった後、かつては宴席になったものだが、簡単に弁当を食べて解散となった。時節柄ということだが、昭和や平成ならコンパニオンを呼んで大宴会になったろう。

 暴力団にとって冬の時代は今後も続く。どの組織も構成員は減る一方で、高齢化も進んでいる。当局への対抗策としてマフィア化するのも必定だ。地下に潜れば今回のような取材は二度とできない。

◆取材・撮影・文/鈴木智彦(フリーライター)

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