ライフ

【新刊】藤井聡太王位への「声なき祝辞」完全版を収録した大崎善生氏の遺稿集『リヴァプールのパレット』など4冊

昨年8月に66歳で逝去した著者。絶筆となった美しい短編を含む遺稿集

昨年8月に66歳で逝去した著者。絶筆となった美しい短編を含む遺稿集

 ぽかぽか陽気のなかで花見でも楽しみたい季節ですが、花粉がつらすぎてできることなら外に出たくない……なんて人も多いのでは? であれば、部屋にこもって読書をしてみるのはいかがでしょうか。新たな世界に触れれば、花粉のつらさも忘れられるはず! おすすめの新刊4冊を紹介します。

『リヴァプールのパレット』大崎善生/角川書店/1870円

 著者が癌闘病中の現在に、ビートルズファンだった妹を亡くした遠い日の記憶を重ねる表題作、妻で棋士の高橋和さんが代読した藤井聡太王位への「声なき祝辞」の完全版などを収録。著者の持ち味は鮮烈なデビュー作『聖の青春』がそうだったように、感情の奔流を抒情の膜で包むこと。祝辞の中で藤井氏に薦めたシベリア鉄道旅。その著作があることも記して惜別に代えたい。

小説すばる新人賞(2024年)受賞作。逃亡ではなく旅立ちを選ぶティーン達の尊さ

小説すばる新人賞(2024年)受賞作。逃亡ではなく旅立ちを選ぶティーン達の尊さ

『グッナイ・ナタリー・クローバー』須藤アンナ/集英社/1760円

 霧の町チェリータウン。13歳のソフィアはパパと兄の3人暮らし。家事をし、店を手伝い、パパの可愛い娘でいようと折檻にも耐える。そんな日常に現れた風変わりな女の子。自由気ままで1週間で記憶をなくすナタリー。彼女達が自転車の2人乗りで坂道を下りながらキャロル・キングの『You’ve Got a Friend』を歌う場面にグッとくる。忘れがたい10代小説がまた増えました。

教養とは「より良く生きる」ためのもの。人間への深い理解も得られる

教養とは「より良く生きる」ためのもの。人間への深い理解も得られる

『50歳から何を学ぶか賢く生きる「教養の身につけ方」』池上彰/PHPビジネス新書/1100円

 教養を身につけることのススメ。なぜ50歳かと言えば、子供が巣立ち、仕事の先行きも見えてくる。学びの好機到来という訳だ。知識は“点”でしかない。池上さんは教養を「知識の運用力」とする。その下地を作るのが読書だと。書物から得た栄養が、後の自分の転機を促す思考になったとする個人史の部分などは説得力十分。聖書など、古今東西の古典から得るものも大きいとか。

「人生は、ひとりで抱え込めば悲劇だが、人に語って笑わせれば喜劇だ」(本文より)

「人生は、ひとりで抱え込めば悲劇だが、人に語って笑わせれば喜劇だ」(本文より)

『もうあかんわ日記』岸田奈美/小学館文庫/847円

 書き方に毎回工夫がある著者。今回は37日間、毎日書いた濃縮日記だ。事後的に書くのと渦中で書くのでは何が違うか。後者では明日が見えない。今日の落ち込みマックスだ。母のコロナ禍の発熱と長時間に及ぶ大手術、何でも醤油味にする祖母のタイムスリップ、ダウン症の弟の動揺、壊れる家電やベランダの鳩の襲来。“悲”に溺れず“笑”を呼び込む人間力に乾杯したくなる。

文/温水ゆかり

※女性セブン2025年4月10日号

関連記事

トピックス

解散を発表したTOKIO(HPより)
「城島さん、松岡さんと協力関係は続けていきたいと思います」福島県庁「TOKIO課」担当者が明かした“現状”と届いたエール
NEWSポストセブン
山本アナは2016年にTBSに入局。現在は『報道特集』のメインキャスターを務める(TBSホームページより)
【「報道特集」での発言を直撃取材】TBS山本恵里伽アナが見せた“異変” 記者の間では「神対応の人」と話題
NEWSポストセブン
蝦夷富士という名前もある羊蹄山(イメージ)
《ブローカーが証言》中国人らが日本の不動産取得でもくろむ乱暴な開発計画 「日本の役人は言うだけで実力行使はしないと聞いている」
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《ベビー服は男の子のものでは?》眞子さん、夫・小室圭さんと貫く“極秘育児”  母・佳代さんの「ラブコール」も届かず…帰国が実現しない可能性も
NEWSポストセブン
吉沢亮演じる喜久雄と横浜流星演じる俊介が剣幕な表情で向かい合うシーンも…(インスタグラムより)
“憑依型俳優”吉沢亮主演の映画『国宝』が大ヒット、噂される新たな「オファー」とは《乗り越えた泥酔事件》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“半日で1000人以上と関係を持った”美女インフルエンサー(26)がイギリスの公共放送で番組出演「口をすぼめて、吸う」過激ビジュアル
NEWSポストセブン
映画『国宝』で梨園の妻を演じた寺島しのぶ(52)
《無言の再投稿》寺島しのぶ、SNSで2回シェアした「画像」に込められた歌舞伎役者である息子・尾上眞秀への“覚悟”
NEWSポストセブン
元横綱・白鵬の宮城野親方に相撲協会はどう動くか(八角理事長/時事通信フォト)
八角理事長体制の相撲協会に「70歳定年制」導入の動き 年寄名跡は「105」しかないため人件費増にはならない特殊事情 一方で現役力士が協会に残ることが困難になる懸念も
NEWSポストセブン
「池田温泉旅館 たち川」の部屋風呂に「温泉偽装疑惑」。左はHPより(現在は削除済み)、右は従業員提供
「水道水にカップ5杯の重曹を入れてグルグル…」岐阜県・池田温泉「高級旅館」の部屋風呂に“温泉偽装”疑惑 ヌルヌルと評判のお湯の真実は…“夜逃げ”オーナーは直撃に「誰からのリークなの? それ」
NEWSポストセブン
これまでジャズ歌手などとしても活動してきた参政党・さや氏(写真/共同通信社)
参政党・さや氏、歌手時代のトラブル証言 ジャズバーのママが「カチンときて縁を切っちゃいました」、さや氏は「そうした事実はない」…真っ向食い違う言い分
週刊ポスト
もうすぐ双子のママになる。Numero.jpより。
Photos:Mika Ninagawa
中川翔子3年にわたる不妊治療と2度の流産を経験 。 双子の男の子のママになる妊婦姿を披露して話題に
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《女優・趣里の現在》パートナー・三山凌輝のトラブルで「活動セーブ」も…突破口となる“初の父娘共演”映画は来年公開へ
NEWSポストセブン