こちらは昨年11月に掲示されていた「闇バイト撲滅」への義憤文。「安心した地域づくりを心掛けております」と締めくくられている(著者撮影)

こちらは昨年11月に掲示されていた「闇バイト撲滅」への義憤文。「安心した地域づくりを心掛けております」と締めくくられている(著者撮影)

碑文谷一家が「義憤文」を掲げた理由

 掲示板の張り紙には、以下のような文書があった。

〈告知 ここ数年、ストーカー行為によって亡くなられた方々のご冥福を心より御祈り申し上げます。任侠道を標榜する当家として、地域に於いて、その様な卑劣な行為の撲滅に最大限の努力を尽くす所存です。弱い立場の人々を守り、事件の未然防止と迅速な解決、安心して暮らせる地域社会の実現に微力乍ら貢献して行く覚悟で御座居ます〉(※句読点の一部は筆者)

 この告知が川崎市で起きたストーカー死体遺棄事件がきっかけであることは明白だ。行方不明になっていた岡崎彩咲陽さんが、元交際相手だった白井秀征容疑者の自宅で、白骨化した遺体になって発見された事件である。彩咲陽さんが何度も神奈川県警にストーカー被害を相談していたと報じられたため、事件を未然に防げなかった警察に批判が集中した。

 では暴力団ならストーカー犯罪を抑止できるのか?

 警察とは違って法律に縛られないぶん、腰が軽いのはあるだろう。地元の暴力団が間に入れば、暴力的なDV気質の男でも対話のテーブルには付くはずだ。

 暴力団が地域社会の顔役だった時代、周辺住民が相談してくるご近所トラブルの筆頭が、非行少年の更生とストーカー対策だった。「ストーカー」という言葉がない時代から、男女関係がこじれると激情し、交際相手や配偶者に付きまとい、暴力を振るって乱暴狼藉を働く人はいて、ヤクザ事務所は汚泥の中に存在する駆け込み寺として機能していた。

 碑文谷一家に告知について当ててみると、「今回はなにもコメントできない。書いていることがすべてで、いかように解釈されてもかまわない」との返答だった。取り付く島もなく、食い下がっても無意味と判断したので、他団体の幹部に感想を尋ねた。

「(碑文谷一家の気持ちは)分かるよ。(対応に)慣れてるからな。男と女の揉め事は盛り場でも日常的に起きる。用心棒をしてる店で、ホステスに付きまとう客や、風俗嬢にストーカーをするおっさんはかなりいる」

 考えてみれば、用心棒稼業の仕事のひとつはストーカー客への対応だ。口で言っても分からぬヤツには、暴力という伝家の宝刀で対応する。

「だけどなんでもかんでも暴力で、なんてことはない。警察に駆け込まれたら捕まっちゃうからね。世間の嫌われ物である我々が出張って片づくなら、若い衆を引き連れて迎えに行ったりする。ストーカーの前で『姐さん、おつかれさまです!』と出迎えれば、それだけで付きまとわなくなる客もいる。

 でも恋人や女房に執着している男は、その程度の芝居じゃ効果ない。女が好きというより、自分がダメ出しされたのが気に入らないだけだったり、そもそもストー-カーに変貌しているヤツは周囲が見えておらず、自らがストーカーとは思ってない。

 根気よく話を聞いてやるうちに、今度はこっちが依存されたりするけど、まずは視界が狭まり、混乱している精神をほぐしてガス抜きする。ストーカー殺人が執拗に相手を何度も刺したり、遺体をバラバラにするのは、テンパりすぎて腹の中にヤバい虫が湧いてるんだ。それを表に出し、化け物になっている男を、普通の人間に戻してやらなきゃ」(広域組織二次団体理事長)

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