今回掲示されていた「ストーカー撲滅」への義憤文。「最大限の努力を尽くす所存」とある
絶滅危惧種になった「物言う暴力団」
何人かの暴力団に話を聞いたが、警察批判はいっさいなかった。ばかりか、天敵に対する同情票が多く意外である。
「相手が我々のような暴力団なら、法律を無視して取り締まりをしても世間は許す。でも相手が一般人だとそうはいかない。放置すれば今回のようになるし、間に入れば、職務を逸脱していると批判される。警察はかわいそうだよ」(在京団体二次団体幹部)
碑文谷一家の告知に実効性があるのか……それについては否定的な声が多かった。
「相手がワルだから蛇の道は蛇で、俺らヤクザの制裁を知っている。悪人ほどブルって言うことを聞くんであって、一般人の、お堅い商売の、クソ真面目なヤツだってストーカーになるからな。そもそもストーカーは恋愛という狂乱から生まれている。頭がおかしくなってるヤツの抑止効果にはならんよ」(関西の独立組織幹部)
碑文谷一家の人間だって、そうした事情は重々承知だろう。ならば告知は単なる話題作りで、人気取りということか。批判もまた想定内かもしれない。実際、暴力団は人気商売だ。縄張り内が過ごしやすくなり、組織の評判が上がれば、その分、頼ってくるカタギが増え、シノギもしやすくなる。
ただし、今のご時世では、暴力団は何を言っても揶揄され、批判される。史上最大といわれた山一抗争では、幹部たちが実名で登場し、「来るなら来いや」と啖呵をきったが、今は抗争取材でも名前や所属を伏せるよう強く要望されるのが常だ。SNS同様の匿名文化は、暴力団社会にも蔓延っており、物言う暴力団は異例中の異例である。
とはいえ、暴力団だって批判を覚悟の上なら発言する権利はある。全国の暴力団が碑文谷一家と同様の行動をとっても、法的に禁止する根拠はないはずで、そうなれば警察は頭が痛いだろう。
◆取材・文/鈴木智彦(フリーライター)