フィリピン人女性監督が描いた「日本人の孤独死」、主演はリリー・フランキー(【c】「Diamonds in the Sand」Film Partners)
家族や友人と疎遠になり、誰にも看取られることなく1人で亡くなってしまう「孤独死」。今やその数は日本国内で年間6万人を超えると推計される。そんな日本社会の重い現実をテーマにした映画『Diamonds in the Sand』が、第27回ウディネ・ファーイースト映画祭で、新人監督賞であるホワイト・マルベリー賞を受賞した。イタリア北部の都市・ウディネで開かれたこの映画祭は、ヨーロッパで最大規模のアジア映画祭だ。主演を務めたリリー・フランキー(61)は会場のステージでユーモアあふれるトークを繰り広げ、観客の笑いを誘った。
監督は、フィリピン人女性のジャヌス・ヴィクトリア (43)で、構想から10年以上かかってようやく完成させた。驚くことに、フィリピンでは「孤独死」という概念がないという。深刻化する日本の超高齢社会は、ジャヌス監督の目にどのように映ったのだろうか。フィリピンを拠点に長年活動してきたノンフィクションライターの水谷竹秀氏が、作品に懸ける監督の思いを聞いた。(敬称略)【前後編の前編】
* * *
映画の中でリリー・フランキーが演じるのは日本のサラリーマン、ヨージ。離婚をし、古びたアパートで1人暮らしを続け、大晦日にもかかわらずコンビニの弁当で済ませる日々。介護施設にいる母も他界し、周囲との人間関係は希薄になっていく。
そんなある日、同じアパートの隣人が腐乱死体で発見される。身につまされたヨージは、母の面倒を見てくれたフィリピン人の看護師・ミネルバを追って、首都マニラへ飛んだ……。日本とフィリピンが舞台になった本作は、孤独死というテーマを通して、生きることの意味や幸せとは何かを静かに問いかけている。
ジャヌスが孤独死について知ったのは、2010年、米ニュース雑誌『TIME』に掲載されていた記事「Japan’s Lonely Deaths」を読んだのがきっかけだ。大阪を拠点にする遺品整理業者の仕事内容を導入として、孤独死の実態と背景に迫っていく内容で、腐乱死体が長期間、部屋に放置されている現実に衝撃を受けたと、ジャヌスは振り返る。