有名人の不倫報道のたびに苦しかった記憶が蘇る(筆者撮影)
ネットで不倫の話題は昔から人気コンテンツのひとつだ。掲示板文化が盛りあがっていた時代は、名も無き当事者が苦しい体験談を語り、主にサレた側の解決に結びつくよう他のユーザーが応援するスレッドが立った。SNSがネットユーザー交流の主な場所になった最近では、芸能人や政治家の不倫報道を勝手に再生産して投稿、いつまでも流通させている。そのため、いつまでも話題が続いているような錯覚を起こさせる。刑事事件でもないので無関係な人には眺めるだけの話題のはずなのだが、有名人の不倫ニュースが目に入るたび、実際に不倫によって家庭が崩壊してしまった傷を掘り返され、つらい人たちがいる。ライターの服部直美氏が、そのサレた側の現実をレポートする。
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「自分も奥さんだったし、週刊誌の記事とはいえトラウマっていうか……ものすごくつらかったから。こういう記事が出るたびに、大丈夫かな奥さんって。まして子どもがいたら余計に自分のことみたいに考えてしまう。不倫って、いろんな家庭のそれぞれ事情があったとしても、された側がどれだけ苦しいのか……経験した人でないと絶対わからないから」
そう話す玲子さん(仮名)は現在40代。20代で年上男性と結婚し、息子3人にも恵まれた。しかし、夫の浮気、不倫に苦しめられ離婚した女性だ。現在、子供たちはすでに独立し、彼女は派遣社員として働きながらひとりで暮らしている。離婚後は仕事を二つ掛け持ちし、朝から夜中まで身を粉にして働いたという。
息子の同級生のお母さん、しかも同じ団地
「ねえ、お母さん……お父さんが翔太くん(仮名)の家にいたよ」
振り返れば、当時小学生だった末っ子の言葉がすべてのはじまりだった。翔太くんは、当時ある地方の公団住宅に暮らしていた玲子さん一家と同じ団地に暮らす息子の同級生。少年野球チームが同じこともあり、シングルマザーの翔太くんの母親とも面識があった。「あのね、翔太くんの家の廊下の窓からね、お父さんの声が聞こえたんだ。本当だよ。お父さんだったよ」そう話す息子に、玲子さんは少し嫌な予感がしたという。それでもご近所で同じ野球チーム、何か事情があったのか、息子の勘違いかもしれない…。悪い予感を必死に消し去ろうとしていた。
ところが数日後、今度は次男とショッピングセンターで買い物をしていた玲子さんの目に、とんでもない光景が飛び込んでくる。夫と翔太くんの母親がツーショットで買い物をしているではないか。その様子は、女の鋭い勘などというレベルではなく、明らかにどう見ても『ただならぬ関係』だと、ひと目で分かった。
「ちょっと、ここで待っててね」次男に見られないように、玲子さんは夫と翔太くんの母親のところへ走った。「ねえ何やってるの?」夫に詰め寄った玲子さん。しかし2人は「あ、いや、ちょっと買い物に来て……なっ」と納得できるような上手い言い訳をするわけでもなく、それどころか2人とも悪びれた様子もなかった。