メジャーでの投球内容(5月21日時点)
好調の秘訣は「右ヒジの高さ」
投球動作解析の第一人者で、筑波大学野球部監督の川村卓教授は、4勝に終わった2023年からフォームが変化した点に着目する。
「大学時代からスリークオーターの投球フォームで、骨盤を先に廻旋させ、遅れて上半身を廻旋させることで、エネルギーを伝達させることに長けた投手でした。しかし、2023年や昨年の悪い時は、左足を踏み込んだ時に、右ヒジが低い位置にありました。そのため“下から上に投げる”ようになってしまい、ボールに回転がかからず、抜けてしまうことが多かった」
ところが、現在のフォームは見違えるように改善されていると続ける。
「メジャーでの投球では、踏み出した左足が土に着くタイミングで右ヒジが高い位置にあり、そこから“叩く”ように投げている。そして、リリースの瞬間まで右足がプレートにかかっていて、地面からの反力を得ている。頭の位置がほとんど変わらず、その結果、視線がぶれないから制球も安定する。大学時代のようなダイナミックさはありませんが、最小限の動きで、最大限の力を出している。まさにお手本の投げ方と言えるでしょう」
100マイル(160キロ)を超える豪腕の投手が次々に現れる時代に、140キロ台の遅いボールで勝負する“オールド・ルーキー”が大打者を手玉にとる──なんとも痛快ではないか。
取材・文/柳川悠二
※週刊ポスト2025年6月6・13日号