貴乃花/第65代・貴乃花光司 701勝217敗201休・優勝22回 185センチ、160キロ:兄・若乃花とともに空前の「若貴ブーム」を巻き起こした平成の大横綱。2場所連続全勝優勝で横綱昇進を決め、ライバル・曙と死闘を繰り広げた(写真/共同通信社)
じっくり取っても勝てる横綱へ
ただ、大の里には安易な引き技やはたき込みへの批判がある。5月場所では千秋楽の豊昇龍戦で攻め込みながらも回り込まれて上手捻りに敗れて全勝優勝を逃している。
「誰が強いかと聞かれると、1に大鵬、2に北の湖と答えます。大鵬は得意の左四つになってまわしが取れないと、土俵の真ん中でひと呼吸おいてまわしが取れるまで待ちました。北の湖は性格的に我慢ができなかったし、大の里も豊昇龍戦では勝ちを急いだことでひと呼吸待てなかった。不十分な体勢で前に出ていき、土俵に転がされたが、ひと呼吸おけば大鵬の相撲になった。今からそれができていたら将来の楽しみがないので、今後の課題でしょうね。
大の里が右四つの相撲を身につければ、じっくり取っても勝てる横綱になる可能性を秘めている。“また大鵬が優勝か”といわれた時代が再来するのではないか」(杉山氏)
やく氏も、大の里は上手を許すと意外に軽くなると指摘するが、「なんせ口癖が“修正”という力士ですからね。今場所も意図して土俵際で腰を下ろす癖が修正されており、今後も修正されるんじゃないですか」と話す。
記録にも記憶にも残る大横綱誕生の予感がする。
取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2025年6月20日号