尹錫悦前大統領(左)と夫人の金建希氏(時事通信フォト)
トランプ氏の最優先事項は「中国の孤立」
朝鮮半島情勢に精通するコリアレポート編集長の辺真一氏もこう語る。
「トランプ氏の最優先事項は中国を孤立させること。もし李政権が台湾有事にコミットせず中立の立場をとるようなら、米韓関係に軋轢が生じる可能性は否定できません」
事実、米共和党のキム・ヨン下院議員は「李氏率いる共に民主党は敵国への内通者」と主張しており、大統領選直前には朝鮮日報が「李氏の存在が米韓同盟に亀裂をもたらす」と警告したほどだった。中国抑止に向けた日米韓の連携が過去にないほど強まっていた尹政権時代に比べ、李政権の外交はアジア太平洋の安全保障を考えるうえで、不安要素が拭えない。
「李氏は台湾有事の際に、在韓米軍を投入しないよう『米国を説得していく』とまで発言しています。日本は韓国抜きに中国と対峙することを想定しておく必要があります」(辺氏)
台湾有事は日本有事とも言われており、米国のヘグゼス国防長官は今年3月、中谷元防衛相との会談後の記者会見で、「日本は我々が西太平洋で直面する可能性があるいかなる緊急事態でも最前線に立つことになるだろう」と発言した。
同じ3月には日本政府も、台湾有事を念頭にした沖縄の避難計画を公表。台湾有事となれば、沖縄が最前線になるのは避けられないという想定である。平井氏が語る。
「韓国の中立という“コリアリスク”により、在日米軍や自衛隊を含めた日本側の軍事的な役割が増すことは避けられない。李政権の誕生はアジア太平洋の安定を崩す可能性を孕んでいるのです」
悪夢の“中韓同盟”に日本はどう向き合うのか。
※週刊ポスト2025年6月20日号