都議選の告示日に東京・品川区大井町駅前に応援演説で現れた玉木雄一郎代表(2025年6月撮影:小川裕夫)
都議選の告示日となった6月13日に、筆者は東京都足立区の北千住駅前で国民民主党の榛葉賀津也幹事長の、品川区の大井町駅前で玉木雄一郎代表の演説を聞くために足を運んだ。
両者の演説は山尾問題にいっさい触れなかった。都議選の応援演説だから国政マターについて言及しないのは当然ではないかという指摘もあるだろう。しかし、演説では石破茂首相が物価対策として進める一人あたり2万円の給付金についての批判や米価・ガソリン価格の高騰などについても触れている。これらは国政マターであることは言うまでもない。自分たちに都合の悪いことだけを国政マターとして説明せず、他方で国政マターの政策課題を持ち出して政権を批判する。これでは国民民主党が常に掲げてきた”対決より解決”路線が色褪せてしまう。
なにより、山尾問題で玉木代表・榛葉幹事長の責任を問う声が党内からあまり聞こえてこない。選挙直前だから党内融和を図りたいという思いは察する。だが、山尾問題で国民民主党は簡単に仲間を切り捨てる政党というイメージが強まりかねず、それでは公認を強行した場合よりも信頼を失いかねない。
支持者からも不評の4名公認
候補者の公認問題は、ほかにもある。国民民主党は山尾氏の公認と同時に、あと3人の元職の擁立も明らかにした。その3人とは、元立憲民主党の参議院議員だった須藤元気氏、元日本維新の会の衆議院議員だった足立康史氏、元みんなの党で参議院議員だった薬師寺道代氏など国会議員経験者だ。
新人候補に比べて議員経験者なので、4名に対する一般的な知名度は高い。また、永田町事情にも精通している。そうした点から公認候補として取り沙汰されたと思われるが、山尾氏も公認を発表した直後から世間の風当たりは強かった。特にSNSでは4人の公認をもって国民民主党を見限るような投稿が相次いでいた。
政界取材歴50年を超えるフリージャーナリストの堀田喬氏は歯に衣着せぬ発言をする永田町では伝説のカメラマンとして以前から知られる。筆者は堀田氏と15年近く懇意にしているが、激しい物言いでも批判的とは限らない。よく言えば昭和のオヤジ的な存在で、永田町のみならず地方でも堀田氏に信頼を寄せる政治家は少なくない。最近では国民民主党のYouTubeチャンネルなどで玉木代表や榛葉幹事長との掛け合いが注目を集め、ハリポッターになぞらえてフリーホッターとの愛称で一般有権者からも人気になっている。
その堀田氏は榛葉幹事長の定例会見で、公認候補4名を「汚物まみれの4人衆」と批判した。かなり激しい言葉だが、国民民主党の支持者からは堀田氏を非難する声は聞かれず、むしろ「よく言った」との礼賛が送られた。