被害者のAさんが住んでいた総世帯数179戸のタワーマンション
弁護人「2021年、和久井さんはAさんに交際を申し込み、AさんはOKをした。その後、大きなケンカをするが、しばらく経ったある日、Aさんのほうからこう言ったのです。『これまでのことは水に流してほしい。私の夢は関西コレクションのランウェイを歩くこと。そのために有名にならなきゃいけないから、私のためにシャンパンタワーをして、人生を賭けてほしい。車とバイクを売って、お金を作ってほしい。そうしてくれたら、結婚する』。
和久井さんは命の次に大事な車とバイクの売却に悩んだが、決意を固めた。そして売却し、1600万円をAさんに渡しました。しかしその後、和久井さんはAさんと連絡が取れなくなってしまったのです。
和久井さんはお金を取り返すために警察に相談したが、ていよく追い返された。そして直接話そうとAさんのもとを何度も訪れ、ストーカー容疑で逮捕されてしまいます。しかし、釈放された後も、大事にしていた車もバイクも失った和久井さんは、気を紛らわせることもできませんでした」
さらに弁護側は、事件の引き金となった前日のライブ配信を見た時の心情や、殺害に至った動機について、こう説明するのだった。
弁護人「和久井さんがAさんのライブ配信の活動再開を知ったのは、事件の1〜2か月前のことです。ライブを見ると、和久井さんのニックネームや名字を出し、一方的にストーカーだと断罪し、『被害を受けた』と発信していました。
事件前日のライブ配信で、Aさんが『ライブが終わったらコンビニ行く』と話していたので、和久井さんは直接会ってナイフを見せて脅せば、謝ってくれる、お金を返してくれると思っていたが、Aさんは逃げ出しました。Aさんを捕まえた後も悲鳴をあげ続け、周りに人が集まってきた。
和久井さんは『ここで逮捕されたら、また一方的に配信される』という思いが頭をめぐり、パニックになってしまった。そして『一矢報いたい』という思いがエスカレートし、Aさんを殺害してしまったのです」
事件現場となったのは、Aさんが住むタワーマンションのサブエントランス前だった。周辺に設置された3台の監視カメラには、被告がAさんを殺害するまでの様子が克明に記録されていた——後編記事では、法廷に流された映像の一部始終について詳報する。
(後編につづく)