記者会見する静岡県伊東市の田久保真紀市長。ピンクのジャケットが注目を集めた(時事通信フォト)
謝罪会見といえば、芸能人もYouTuberも黒スーツや黒ネクタイなど、黒っぽい服装で人前に出てくるのが最近のやり方だろう。ところが、静岡県伊東市の田久保眞紀市長は、疑惑について謝罪すると思われていた会見にピンクのジャケットであらわれた。臨床心理士の岡村美奈さんが、ピンクを選んだ田久保市長の真意と狙いについて分析した。
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7月7日。静岡県伊東市の田久保眞紀市長が会場に現れた瞬間、その姿に唖然とした人が多かったのではないだろうか。学歴詐称疑惑をめぐって世間を騒がせていた田久保氏が着用していたのは、ピンクのジャケットだったからだ。
会見冒頭、田久保氏は「私の学歴に関する問題で、皆様方に本当に大変ご迷惑をおかけいたしました。本当に申し訳ございませんでした」と述べ、頭を下げた。謝罪の場に不釣り合いなピンク色のジャケットが、この人は本当に謝罪する意思があるのかと思わせた。
謝罪会見なら、着用するジャケットは暗色のグレーや黒がスタンダードだ。ピンクはあり得ない。それに彼女は普段、黒系のジャケットが多い。わざわざこの会見にピンクのジャケットを選んだのには、彼女なりの意図があるのだろう。
ネットやメディアでは、ピンクジャケットを巡り非難や批判が飛び交った。“謝罪には不釣り合い”“ピンクを着て出てくる感覚がわからない”“謝罪にピンクは普通じゃない”などだ。誰もがこの会見を謝罪会見だと思っていたからだが、田久保氏にとってこの会見は謝罪するための会見ではない。謝ったのは騒動がおきてしまったことに対してであり、自分の過ちを認めて謝罪したのではない。だからこの会見は釈明のための会見であり、再出馬を表明するための会見ということになる。再出馬のためと思えば、ピンクを着てきた意味がわかる。
さらに問題となっている卒業証書の真偽は、捜査機関の判断に委ねるという。
ピンクという色は、無邪気で無害な印象を与え、主体的よりも依存的なイメージであり、守られたい庇護されたいという気持ちを印象づけるといわれている。捜査機関に委ねることで、経歴や卒業証書の虚偽を自ら認めることなく、辞職して再選を狙うという逃げ道を見つけたのだ。そして彼女はピンクを選んだ。