通算勝利数は日本競馬史上10位で現役最多という名伯楽・国枝栄調教師
山崎先生はとても真面目な人で、強い馬に積極的に関わりたいと考える人ではなかったが、馬に対する接し方はとても丁寧だった。無理な馬づくりをしないという私の姿勢は、この時代に染み付いたものだと思う。
1年前に調教助手になっていた藤さん(藤沢和雄元調教師)とは、同世代ということもあって仲良くしてもらった。彼はすでに単身でイギリス留学をしていて、世界の競馬事情に詳しかった。海外競馬には以前から興味を持っていたので、いろいろ話を聞いているうちに、行ってみたいと思うようになった。
すると84年にアラブ首長国連邦のシェイク・モハメド殿下によるイギリスへの留学制度ができた。私はたまたまトレセンの英会話スクール(無料)に暇つぶしで通っており、片言でも英語がわかるヤツということで、助手の立場でありながら行かせてもらうことになった。この貴重な経験がなければその後の私はなかったと断言できる。
【プロフィール】
国枝栄(くにえだ・さかえ)/1955年岐阜県生まれ。東京農工大学農学部獣医学科卒業後の1978年から美浦・山崎彰義厩舎で調教助手。1989年に調教師免許を取得して1990年に開業、以後優秀調教師賞7回、優秀厩舎賞7回。主な管理馬はほかにブラックホーク、マツリダゴッホ、サークルオブライフ、ステレンボッシュなど。
※週刊ポスト2025年7月18・25日号