「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏
毎月70万円を夜の街での遊びに投じていた
小栗匡平さん(40歳)は、裕福な家庭に生を受けた。父方の祖父は先物相場で財を成し、都内の一等地に1億5000万相当のアパートを所有していた。その賃料だけで、両親と小栗さんはこれまで何不自由なく暮らしてきたそうだ。そして、アパートの土地建物を所有・管理する会社の役員でもある小栗さんには、毎月70万円もの大金が入ってきていた。
両親と同居していた小栗さんは、毎月手にする70万円のほとんどを歌舞伎町の飲み屋とガールズバー、それに性風俗店での遊びに投じていた。
そうしたうちの1軒のガールズバーで、悪い出会いがあった。小栗さんに目をつけ、しきりに話しかけてきた客の男は、平山文則と名乗った。この店のキャストの恋人であり、不動産会社の幹部だった。のちに判明したが、この不動産会社は神奈川県に拠点を置く広域暴力団のフロント企業でもあった。
店で何度か会ううち、気のいい小栗さんに付け込んだ平山は酒を奢ってもらうようになった。そして、小栗さんが好意を抱くキャストが自分の恋人である津田美咲だと確信すると、同棲している事実を伏せたまま小栗さんを誘って3人でアフターに出かけ、その後、朝まで遊んだ分までも、すべて小栗さんに支払わせるようになったのである。この時点で、平山と美咲が行っていた「タカリ行為」は酷いやり口ではあるものの、まだ犯罪とまでは言えない。
2人の行為は次第にエスカレートしていった。一緒に飲んでいるうちに、小栗さんが「愛の手帳」を持つ軽度の知的障害者であることを知った平山は、乗り気でない小栗さんに「暗算ゲーム」を強要し、彼が計算を間違えるとおもちゃのハンマーで殴るようになった。
海外から輸入した筋肉増強剤をのみ、ジムで身体を鍛えていた平山は、身長こそ170㎝ながら、体重は90㎏。おもちゃのハンマーではあるものの、ゴリラのような太い腕で振り回され、鼻を狙われるのだから、小栗さんは恐怖を覚えたに違いない。
その怯えを利用して、平山は「詫びシャン」(場を白けさせたお詫びのシャンパン)を強要するようになった。そのシャンパンの売上は、小栗さんの担当キャストである美咲の懐に入るのだ。