被告人の犯行のきっかけは「夫との口論」だった(画像はイメージ、Getty)
きっかけとなった「夫との口論」
そして、質問は事件のきっかけともいえる1月3日の夫とのトラブルに及ぶ。
訪問ヘルパーの帰宅後、被告人は夫に体位交換の手伝いを頼んだ。痰を出しやすくするためにしているうつ伏せの体勢から仰向けにする。必ず2人がかりで行うもので、看病のなかでも特に慎重さが必要な作業だった。
夫は怒った顔をして、「あー、寝れん」「飲み会遅れて行こうかな」と不機嫌そうな受け答えをしたという。事前にあらかじめ相談し、了承を得ていたこともあり、被告人は驚いた。それまで、夫に介護の手伝いを断られたことはなかった。
被告人の心中に「心菜より飲み会が大事なのか」「ずっとうつ伏せの体勢がかわいそう」という感情が渦巻き、夫への驚きは怒りに変わった。被告人が夫に「1人でやる」と伝えると、「あー、いいと?」と夫は寝室に戻っていってしまった。被告人は1人で全身を使って、恐る恐る体位交換を行った。首も座っていない心菜さんにとっては、脱臼等の恐れもある行為だ。
怒りの感情は徐々に悲しみへと変わり、涙が止まらなくなった。自分の頑張りをないがしろにされたからではなく、「長女がかわいそう」という思いからだった。そのうちに気持ちが落ち込んで、これまで親族が心菜さんに向けてきた言動が頭に浮かぶようになったという。