今回の参院選で話題をリードした参政党。街頭演説ではプラカードを持ち、抗議の声をあげる人の姿も(写真撮影:小川裕夫)
5月まで、参政党はそれほど注目されていなかった。むしろ2024年の衆院選で4倍に議席を増やした国民民主党が、そのまま勢いで参院選でも議席を増やすと見られていた。しかし、玉木雄一郎代表の女性スキャンダルや山尾志桜里氏の公認を巡るドタバタ劇などによって失速。参院選の前哨戦と見られていた東京都議会議員選挙では9名の当選者を出したものの、明らかに以前より勢いを失っていた。
一方、参政党は都議選で3名の当選者を出した。獲得議席数では国民民主党に及ばなかったものの、その後も勢いを増し続けてきた。実際に、一部のメディアによる参院選情勢報道では東京選挙区で擁立したさや氏がトップと伝えられ、当確も一番乗りだった。
参政党は自民党よりも強く保守思想を打ち出している。リベラル寄りの政策が増えた自民党から支持者が参政党へと動く要因になっている。もっとも分かりやすく保守の有権者に届いたのが、参政党が掲げた”日本人ファースト”というスローガンだ。このスローガンが刺さり、一気に支持を拡大させた。
“日本人ファースト”というスローガンは、外国人への憎悪をいたずらに高め、排外主義を助長するとの強い非難を受けている。ところが、参政党やその支持者たちは意に介さない。
参政党の支持者は保守層が多いと分析されているが、それは筆者も現場を取材していて実感する。しかし、保守層に刺さるスローガンを掲げたから参政党が支持・党勢を拡大できたと単純に考えてしまうと、参政党の本質を見誤る。
なぜなら、これまでにも参政党と同じような政治思想・政策を打ち出す政党(厳密には政治団体)があったからだ。
たとえば、前回の衆院選で得票率2パーセントを達成して晴れて国政政党となった日本保守党も移民政策の是正を訴え、保守層から支持されているものの、勢いでは参政党に及ばない。過去には参政党よりも強く排外主義を打ち出していた政治団体もある。そうした多くの政治団体は党勢を拡大できなかった。
それらを踏まえれば、保守的な政治思想を訴えたり、日本を優先する政策を打ち出すだけで支持を拡大できるわけではない。話題を集めることはできても、広い層から得票することは無理というのが相場だった。ところが、参院選東京選挙区で起きたことを振り返ると、今回は違うことが起きていると分かる。
2024都知事選の石丸伸二氏と2025参院選さや氏の共通点
東京選挙区で鈴木大地氏に次ぐ2番目の得票数で当選したさや氏は参院選公示後も無名の存在で、公示後も名前が広く知られているとは言い難い。それでも東京選挙区でトップという情勢調査が出ていたのだから、参政党の勢いには凄まじいものがある。いったい、さや氏の何が有権者を惹きつけたのだろうか。