参院選最終日、蒲田駅西口で街頭演説に立つ自民党の石破茂総裁(写真撮影:小川裕夫)
都議選・参院選で石丸旋風が起きなかったのは再生の道の候補者たちが石丸氏の知名度に頼り過ぎて、かけずり回って街頭演説をしなかったことが原因だと筆者は見ている。
一方、さや氏の選挙活動を見続けていると、選挙区を細かく回っていることに気づかされる。さや氏は平日の午前中から数カ所を回って街頭演説を実施している。そこで政見を語り、支持を訴え続けた。とはいえ、さや氏の街頭演説に集まった支援者たちは、都知事選の石丸氏と比べると決して多くない。
そういう意味で都知事選の石丸氏ほどの勢いを感じなかったが、それでも1日に何回も街頭演説をしたことが支持を広げることにつながった。これは何度も参政党の街頭演説に足を運ばなければ気づくことができない。
選挙に立候補しているのだから、たくさん街頭演説をするのは当然じゃないか、と疑問に思うかもしれない。しかし、平日の午前中は人が集まりにくい。街頭演説をすれば人手も必要になるし、候補者も体力・精神を消耗する。それらを勘案し、平日の午前中に何度も街頭演説をする候補者は少ない。
さや氏が新人候補で話せる内容が少ないから演説そのものは短いが、各所を回って回数をこなすことでそれを補う。さや氏の街頭演説は、規模感こそ違うものの都知事選における石丸氏のスタイルに似ていた。
永田町をはじめとする政治の世界では、「選挙は握手した人の数しか票は出ない」という格言がある。インターネット選挙が解禁されてから10年以上が経過し、候補者もネットを駆使した選挙活動に力を入れるようになった。インターネットは発信が容易で速効性もある。効果も可視化されやすいので、支持を拡大したい候補者がインターネットに頼りたくなる気持ちは理解できなくもない。しかし、インターネットの力を過信してはいけない。
インターネットに支持を拡大させる力はあるものの、政治は何だかんだ言っても最終的に人なのである。だからネットに頼る候補者よりも、直に会話をし、握手を交わす候補者が選挙では強い。さや氏がそれをどこまで意識していたのかは計りかねるところだが、実践していた。
多くの街頭演説をこなすことは、時代が変わっても選挙でもっとも有効な集票手段だったことが参政党の躍進で証明されることになった。