参院選が公示され、第一声を上げた後、撮影に応じる(左から)田母神俊雄・元航空幕僚長、参政党の神谷宗幣代表、東京選挙区に立候補した参政党のさや氏、経世論研究所の三橋貴明所長。7月3日(時事通信フォト)
報じられたいくつかの記事によると、彼女が政治を志したのは、保守系のネット番組で長年キャスターを務め、論客たちと政治について議論を重ねてきたからとある。作家で評論家の古谷経衝氏による「参政党、さや氏―異色の履歴・不遇の遍歴」というYahoo!ニュースで執筆した記事で、彼女は番組のアシスタントであって論客とはみなされず、言論レベルは未熟、実力がなかったと書かれている。しかしここでの経験が、今、最も注目を集める素材がどれなのかを判断する嗅覚を養うことにつながったのかもしれない。
内容が薄い演説なら、内容よりも極端で過激で荒唐無稽なメッセージが効果的だ。話を聞いてじっくり考えるより、直観的に人々の共感を呼びさまし、嫌悪感情を刺激するからだ。参政党の掲げる”日本人ファースト”もさや氏の演説では”排外主義”や”差別”の色合いが濃くなっていく。アメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領のように、世界各国で自国や自国民を優先する主張を掲げる政党や政治家が力を持ち始めている。日本でも外国人の増加に伴い様々な問題が噴出。参政党もさや氏もその流れにうまく乗ったのだろう。春さんはそんなさや氏の街頭演説をヘイトスピーチと断じ、「ホラーより怖いさや」と痛烈に批判した。
だがさや氏は早々と当選。前述した小川氏はその理由を、ネットの力だけでなく選挙区各所を細かく回り、街頭演説の回数をこなしたからと分析。ジャズシンガーでもあったさや氏は、細身で清楚なルックスから男性ファンを中心に支持層が厚かったようだ。公約や政策に賛同するからというだけでなく、候補者自身を応援したいというサポーターもいただろう。稚拙だが過激な演説内容に清楚なルックス、ネットで注目を集め、選挙区をくまなく回り支援を訴える。その選挙活動は、必死にパフォーマンスを披露しファンサービスに励むアイドルの卵を、推し活にいそしむファンたちが一流のアイドルに育てていくというのと似た構図にも思えてくる。
現実離れした過激さこそがさや氏の武器だったのかもしれない。