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イクイノックスの登場で日本のサイアーラインは新しい時代に 来年のクラブ募集馬は逸材だらけだ

写真/Japan Racing Horse Association

最高額をつけたイクイノックス産駒(写真/Japan Racing Horse Association)

 セレクトセールの現場に居合わせると、世の中の懸念などどこ吹く風に思える。競馬ライターの東田和美氏が考察した。

 * * *
 2日間の落札額合計が史上初めて300億円を超えようが、平均落札額が7000万円を超えようが、落札率が97%に達しようがもう驚かない。23頭が落札されたイクイノックス産駒が最高5億8000万円、平均で1億5000万円以上というのも、まあそうだろうなと納得できる。特筆すべきは18頭が1億円を超えた父キタサンブラックもまだ現役バリバリの人気種牡馬だということだ。それどころかその父ブラックタイドも今年オークスの勝ち馬を輩出し、いまだリーディング上位に君臨しているのだ。

 1998年の第1回セレクトセールでは当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったサンデーサイレンス産駒が22頭上場され6頭が1億円を超える値をつけたが、ダンスインザダークは最高4600万円、フジキセキは4700万円までだった。キングカメハメハが健在の時にルーラーシップやドゥラメンテが父の評価を超えることはなかった。子が父の評価を超えたのはオルフェーヴルが初登場した2015年にステイゴールド産駒より若干高値を付けたぐらいだろうか。2017年の当歳セリに13頭が上場されたキズナ産駒の最高価格は9000万円だったが、その年ディープインパクト産駒の当歳は最高5億8000万円を筆頭に9頭が1億円以上だった。

 サラブレッドというのは世代を経ていく度に改良が重ねられているわけで、子が父より互角以上の評価を受けるのは本来当然のこと。そうでなければ血統はやがて先細りしてしまう。かつての日本では、期待されながら子孫が種牡馬になることができずに途絶えた血統が数多くあった。その意味でもこの父子の登場は、日本のサイアーラインにおいて重要な意味を持つ。そしてサンデーサイレンスひ孫世代の始まりでもある。

 ところでイクイノックス産駒の上場馬はノーザンファーム生産馬が6頭、社台ファーム2頭、追分ファームが1頭だけだった。2008年にはじめてディープインパクト産駒が上場された時は36頭、そのうち社台グループからは16頭が上場されている。残された産駒の顔触れを見れば、社台グループが出し惜しみしたのではないかと勘繰ってしまうほど。つまりイクイノックス産駒に関してはまだ序章に過ぎないということだ。

 胆振軽種馬農業協同組合のHPによれば、今年の1歳セリでコントレイル牝馬が1億4000万円で落札された母アスコルティがイクイノックスの牡馬を生んでいる。また4億1000万円の値をつけたキタサンブラック産駒の母ノームコア、3億1000万円だったサートゥルナーリア産駒の母ヤンキーローズが牝馬を、その他セールで高額落札馬の常連だったセリエンホルテ、ドリームアンドドゥなど、父イクイノックスの当歳馬はこの夏を越えてさらに成長するだろう。1歳セリで上場されたら、どこまで上がっていくか見当がつかない。さらに来年の当歳セリではドウデュース産駒も参戦するので、今年以上に白熱するのは間違いないだろう。

 それ以上に驚かされるのがクラブで募集されそうな面々。母アーモンドアイの牡馬は募集価格がどれほどになるかは考えるだけでも気が遠くなる。なにしろ初仔エピファネイアの牡馬が総額2億4000万円、第2子モーリスの牡馬が2億円だったのだ。他にキズナ産駒の牝馬が7000万円だったアエロリット、クロノジェネシス、チェッキーノ、リスグラシュー、レシステンシアの子などは牝馬でもかなりの募集価格が設定されるだろう。それでもなんとか出資したいと思わせる強烈な魅力がこの馬にはある。

 祖父ブラックタイド、父キタサンブラックとの「三世代対決」も夢ではない。産駒がデビューする2年後が待ち遠しくて仕方がない。

■東田和美(ひがしだ・かずみ) 競馬歴45年、一口馬主歴35年、地方馬主歴25年のエンタメ・ライター。2024年の出資・所有馬は97戦14勝2着7回3着8回。GⅠ2勝ながらも愛馬が4着以下に敗れたレースが近年では最も多く、無条件に応援馬券を買っているため馬券収支はマイナス(涙)。

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