告示日前、安野貴博氏(左)と峰島侑也氏(右)が新宿駅前で実施した街頭演説(2025年6月写真撮影:小川裕夫)
激しい言葉の応酬など、対立がリアルでもネットでも目立った2025参院選を振り返るなか、異色の選挙活動を続けたのが、AIエンジニア、安野貴博氏が率いる「チームみらい」だ。分断ではなく政策を訴えると宣言し比例で安野氏が当選、得票率2パーセント超えを達成してチームみらいは政治団体から政党になった。選挙の取材を長年、続けているライターの小川裕夫氏が、個人プレーのように見えてチーム活動としての力がものをいう選挙活動について、今後も発揮されるだろうチームみらいの独自性についてレポートする。
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昨年の衆院選で石破茂総裁が率いる自民党と、連立与党を組む公明党は大敗北を喫した。石破総裁は選挙前に自公で過半数という勝敗ラインを明言したが、7月20日に投開票された第27回参議院議員選挙で自公は少数与党に転落した。
よくも悪くも、参院選で話題を独占したのは”日本人ファースト”を前面に打ち出した参政党だが、ほかにも今回の参院選が国政初挑戦となった石丸伸二氏が率いる再生の道と安野貴博が率いるチームみらいが注目を集めた。
前者の再生の道は、2024年の東京都知事選挙で156万票超を得票したことで時の人となった石丸氏が今年に立ち上げた地域政党だが、同団体は政党要件を満たしていないので、正確には政治団体という位置付けになる。
同じく2024都知事選で15万票超を獲得した安野貴博氏もチームみらいという政治団体を立ち上げて参院選に挑戦した。
都知事選での得票数を見れば、再生の道もチームみらいも当選者を出せる力は十分にある。しかし、再生の道は参議院選の前哨戦とされていた東京都都議会議員選挙に多数の候補者を送り出しながらも全員が落選。捲土重来を期して参院選に臨んだものの、石丸氏が立候補していないことや公約が教育一本ということから支持は広がらなかった。結果、当選者を出すことは叶わなかった。
一方、安野氏が立ち上げたチームみらいは都議選に候補者を出さず、参院選一本にリソースを絞った。安野氏は都知事選で石丸氏より少ない得票だったものの、その後に地道に活動を続けて支援の輪を広げた。
「分断を煽らない」
筆者は都知事選から石丸氏と安野氏をつぶさに取材しているが、石丸・安野両氏はそれぞれ独特な戦い方で選挙に臨んでいる。特に安野氏は旧来の政党や候補者とは戦い方が異なっていると感じた。