1996年の秋季キャンプ(撮影/山崎力夫)
長嶋氏のデビュー戦で登板した金田氏は、4打席4三振に打ち取って六大学野球のスターに“プロの壁”を教えた存在としても知られる。チームメイトになってからも教えを授ける立場となった格好だが、その後、長嶋氏に驚かされたとも語った。
「長嶋がすごいのは何事もやり始めたら半端じゃないことだ。とにかく一生懸命やる。その勢いはすさまじかったよ。ワシも“鍛えるだけじゃダメだ、鍛えたあとに10倍体のケアをしなけりゃいかん”とアドバイスしてやった。
ワシは当時から専属トレーナーを自費で雇っていたが、長嶋はこれも取り入れようとして“カネさん、マッサージ貸してください”と言って連れて行きよった。そのトレーナーはワシのところに二度と戻ってこなかったよ(笑い)」
※『巨人V9の真実』(小学館新書)より一部抜粋・再構成
【プロフィール】
鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。『週刊ポスト』記者として、スポーツ、社会問題を中心に幅広く取材活動を重ね、特に野球界、角界の深奥に斬り込んだ数々のスクープで話題を集めた。著書に8競技のベテラン審判員の証言を集めた『審判はつらいよ』(小学館新書)などがある。新著『巨人V9の真実』には、長嶋茂雄氏、王貞治氏、金田正一氏らの貴重な証言の数々が収録されている。